【変則的周辺参加】の苗木として

ソネアキラさんが、ネットの振る舞い、可能性、について保坂和志の素人レビューの苦言(日刊イトイ新聞)を受けて連日エントリーアップしていますが、昨日は野村一夫の『インフォアーツ』(情報学芸力)について、問題点を苗床まで掘り起こしてこのテーマの方向性を指示していますね。成程、ことは読者レビュー、書評家、プロの文芸評論家、といった地平でも問題ではなく、そもそも、ネットで情報学芸力(それは、多分、今や崩壊の危機にある人文・科学的教養に支えられもの)は育つのか、育つことを信じてネットを肯定的に利用しませんか、って言うことだと思う。
それは学校教育の現場で、図書館など、コミュニティの場で、ハードなインフォテックの技術教育でなく、ソフト面でのアーツを身につけさせ、少なくともメディア・リテラシーの貧困さからおさらばして“自分の頭で考える知性”を苗床するテクとしてネットは奥深いものがあるんではないか、そんなメッセージだと思います。僕もbk1に本書のレビューを書いていたので、ソネアキラさんのと、参照してください。

[……] 著者自身のコメント、切口の違う書評諸氏一覧に屋上屋を架す事になると思ったが、インフォテックの技術面は未熟でbk1を頼りの苗床と勝手に決め、[正統的でない変則的周辺参加]の書評投稿している私の立場で屋を架す事が出来るのではないかと思い、書く事にしました。この本の内容紹介、梗概は他の書評欄で参照してもらい、気儘に書きます。ただ、野村氏が再三言ってるように、情報倫理(ガバナンス原理の表目)を念頭に置いた振る舞いは当然、心得た前提です。往々にして、メビウス裏目となって、インフォテックな携帯語群が自由気儘に飛び交っていますが、台無し世代(野村造語)が形成したブンタイは[動物化するポストモダン的文体]として、見守るしかないのではないか。私は携帯電話を持っていない珍動物です。そんな私ですがPCには興味を持ちました。そのような経緯は山形浩生著『コンピュータのきもち』に書評投稿して書き込んでいるが、それは情報学芸力を身に付けたい動機から来たものであり、[携帯・ゲーム]には全く、興味がありませんでした。あくまで、出発点はインフォアーツなのです。
[中略]野村氏がぼやく「新書さえ読んだ事のない大学生」が珍しくない状況の中で図書館の利用の仕方等、パソコン以前の情報学芸力が常識として身についていない人々に情報技術力(インフォテック)を特化して与えるIT教育は単に大義名分の名のもと、行政が金を出し易い管を敷設した経済施策なのであろう。そのような方向性に対して野村氏がインフォアーツという造語で異議申し立てする事は解る。これを叩き台として[眼識ある市民]が行政の場で、ネットで、苗床で[分散的知性]を繋げて地道にやるしかないであろう。メディア・リテラシーの貧困からくる御し易い人々を[ガバメント原理]が舌舐めずりして待ち望んでいる事を一刻も忘れてはならない。
 私の書評投稿動機を野村氏の言う[正統的周辺参加]を拡大解釈して後付してしまいました。勿論、情報環境の共有地としてのコモンズに置いてbk1市場経済モデルとして関与しているのだが、私は恣意的に【苗床集団bk1】と見ているのだなあと、この本で思い至ったのです。恐らく、bk1独自の投稿書評シシテムが私にかような錯覚をなさしめたと思います。野村氏はbk1の社外エディターとして開店に参加し、「ものを売ることは数ある影響力の中でもっとも大きいものだ」という事を体感されたようであるが、書評を書いて本を売るという一点はネット書店の生命線である事は揺るぎがないみたいである。
 だから、本来、消費者でしかないはずの私が書評を介して読書書評というコンテンツの中で変容されて、まるで、リアル書店の手書きのPOP広告に似た変則的周辺参加をしていると考えても不思議はない。まあ、そういう事態を私なりに楽しんでいるのだが。今年から始まった[オススメ評者の一覧]はbk1が囲い込んだ苗床集団に見える。本当は個人HPを張付ければ文字通り周辺参加が出来るのだが、現在のところインフォテックなスキルがないのです。そんな初心者です。

しかし、過去の自分のbk1書評を読んでみて、初心を忘れていますねっ、と汗をかきました。このところ、bk1に書評投稿をしていないのです。確かに保坂和志さんのHPを訪問したり、新潮連載の「小説をめぐって」を読みながら、まず、しっかりと読むことが大切で、最初からその本について書くことを念頭においた読書経験は不幸ですよと、マットウな冷水をかけられたこともあいまってやり始めの頃は1600文字のレビューを週に二回もアップしていた熱い気持ちが急激にクールダウンしたことは否めません。
だけど、野村さんの言うインフォアーツは多少このことと交差はしますが、ネットにおける苗床つくりでレビュージャパンや、bk1のレビュー、様々なネット上でのレビューが飛び交う状況を“よきもの”として受信したいものです。
参照:bk1インフォアーツレビュー一覧
いや〜あ、この一覧を見るとソネさんだけでなく、オリオンさん、3307さん、御馴染みの人達が皆さん書いていますね、もう、二、三年前ですか、ブログが話題になる以前ですね、となると、ブログが流通することによって、少なくとも書評投稿がクールダウンした側面がありますね。ブログって、野村さんの言う「分散的知性」を育成する苗床になっているのか、むしろ、それぞれが、それぞれのブログという穴の中で閉じこもってしまう一面の方が拡大しているのではないか、そんな疑問がふとよぎりました。