王子ーお茶の水ー神保町ー巣鴨(日比谷)ー駒込

ナンダロウアヤシゲな日々─ 本の海で
 ナンダロウアヤシゲさんのブログで物件ツアー・王子編が目に飛び込んできたので、なんだろうと読んで、僕自身も王子について書きたくなった。王子と言えばここ数年読んだ小説の中で文句なく僕の中で愛読の一冊になる堀江敏幸の『いつか王子駅で』はこのブログ内でも書き散らしているし、bk1の書評者の人達も高評価で、みんなで「読む歓び」を交歓できた近年稀な小説でした。このレビュー内でも僕のレビューは殆どブログと変わらないノリなので、堀江さんの小説のストーリーから逸脱して私的な想いにハマってしまっている。まあ、読んでいる時間こそが小説ならば間違いなく僕の現実と噛み合って小説が立ち上がっている。
 王子には10年居座っていたのだろうか、関西に引越ししてから数年経ったのです。今の王子周辺はどうなっているんだろうと、ナンダロウアヤシゲさんの記事が気になったのです。あんまり変わっていませんね、相変わらず文教堂があるし、ブックオフがない。でも、歩いて赤羽までは近い。そこにブックオフがあります。そのかわり北本通り、明治通り沿いに同じ経営の○○○古本屋(あれ!名前を失念、数年離れるとダメですね)が三軒あります。日販の王子流通センターに向かう明治通り沿いの店舗は元日本語学校のビルをそっくり改装して古本屋にしたもので、三階立ての立派なものです。
 ただ、最初の頃と違ってホビー関係が増えて、店内に一服できる休憩室を設ける余裕のレイアウトをしていますが、段々本以外の商品が増え始めましたね。ここで、ビル・エヴァンスの「Waltz for Debby」が300円で売っていました。入り口の壁一面に巨大な棚を設けて100円コーナーがあります。ここの通りは結構業界関係者の車が行き交いますので、その因果関係は想像の閾を出ませんが古書というより新刊で掘り出しの新中古本を見つけることが出来ますね。古本好きの人に是非とも覗くことをオススメします。
 アヤシゲさんの書いていた中央図書館では色々お世話になりました。引越しの折、オーディオセットを無理やり寄贈してきましたが、BOSEのスピーカー(これは王子の古物商店から買ったものー王子駅近くの北本通り沿いにありますー)は移動図書館の車に備え付けるとスタッフが言っていましたが、どうなっているでしょうね。ここの図書館では様々な想い出があります。どうしても探したい本があってスタッフ立会いのもと地下の閉架倉庫に入ったことがありましたが、宝の山でした。
 ここのリサイクル棚でもらった日本経済新聞社発行の私の履歴書で澁澤秀雄のエッセイを読みました。勿論渋沢家はこの地と深いかかわりがあるのです。王子飛鳥山公園内に澁澤栄一を初めとした博物館があります。有名は紙の博物館の隣です。この本は又、誰かにあげていますね、もう棚にありません。だから確認は出来ないのですが、確か、旧制中学生?の時、王子村から本郷通り駒込、ず〜と下って、東大前、そしてお茶の水へと歩いて通学したという。今の湯島聖堂東京医科歯科大学あたりに学校があったんでしょうね。それで、よせばいいのに、僕は東京医科歯科大学付属病院に通院していたので、中学生が通学しているなら、オレだって出来なくはないと、王子駅から二、三回歩いて通院したことがあります。一時間以上はかかりましたね、アップダウンがあって街沿いも面白く中々楽しい道中でした。
 それから、診察を終えて、川を渡り、すずらん通りに出て古本屋を覗き、東京堂三省堂、南海でカツカレーを食べて元気が出ればそのまんま、皇居に向かって歩き始める。内堀通りから日比谷図書館に行き、公園で暫し吉田修一の『パークライフ』のような無為を愉しむ。それか、岩波ホールの方に行って、映画を見るか、地下鉄に乗って巣鴨に出る。駒込六義園近くに10年近く住んでいたので、爺婆の原宿通りの巣鴨はよく行っていたのです。
 しかし、自転車で買い物する吉本隆明さんの姿はお見受けしなかったですね。一度、そんな姿の隆明さんを目にしたかったです。田口久美子の『書店風雲録』によると今泉正光氏とリブロ池袋店時代、吉本宅に訪問したときのエピソードが書いてありますが、とてもほほえましい吉本家の風景が浮かびますね。
 東京はよく歩きました。今住んでいる関西の郊外は車社会なので歩くに適しないですね。東京は一日中歩いても退屈しない。様々な発見がありますね。中沢新一の『アースダイバー』地図を持ってもう一度歩いてみたいです。