有名ラーメン店

 昨日、京都京阪三条駅を下車して、いつも並んでいる列が長く、イラチの僕は一度も入ったことのない有名ラーメン屋に魔がさしたのか、列に加わりました。途中でメニューが前の列から回ってきて、味噌チャーシュ麺をチェックしたのですが、そうなると何となく列から離れがたくなる。暫くすると女の子が店から出て並んでいる一人一人にオーダーを訊く。並んでいる人は殆どアベックの若者たちで爺一人は僕ぐらい。彼らの会話を聴くともなく聴いて、読んでいるのは堀江敏幸の『河岸忘日抄』(新潮社)。
 そうやって準備運動?を済ませていざカウンターに座ってラーメンの丼が来たのですが、嫌な予感がしました。丼が小さいのです。見慣れた底が浅く、広縁が拡がったラーメンでしか使わない器でなく、丼物、饂飩、蕎麦でよく使われている小ぶりの丼です。肉厚でなく手で持ったら熱く、一瞬、ひやぁとしましたが、食べ始めると、そんなに熱くない。裏切られた感じ。ゴマ味の味噌スープを啜りましたが、あたりまえのスープ。問題は麺です。腰がないのです。食感が頼りない。
 それより一番、頭にきたのは葱の姿が隠れている。まあ、別にネギラーメンをオーダーしたわけでないので、文句を言えないが、ラーメンにネギは定番だと思うから、がっくりきました。高田馬場の某ラーメン屋さんは汚い店つくりですが、いつも長い列が出来てとうとう一度も行くことが出来ませんでしたが、友だちの話では丼一杯にネギが山盛りになる。その中にラーメンが隠れて麺が見えない。別にネギラーメンではないのです。この京都のラーメン屋さんは逆にネギが隠れている。そんな埒もないことを考えていたら、隣のアベックの男の子がラーメンのオーダー追加でネギメシ(ライス)なるものを注文する。
 「へ〜、ネギ飯なんてあるんだ」と聞耳立てて、どんなメニューなんだろうと期待して待っていたのに、ラーメンがきて男の子は食べ始めたのですが、いつまで経っても肝心のネギ飯がこない。彼はラーメンを御数にネギ飯を食べる積もりだったんでしょう。こない!とうとう、彼は「あの〜、ネギメシはまだですか」、女の子は慌て騒がす伝票を確認する。忘れているのです。僕でなくてよかったですね。僕だったら嫌みを言います。目で怒る。男の子の方が恐縮していた。半丼に練り味噌のようなものをトッピングで白飯の上につけオープンサンドならず、オープン握り飯のようなもんだなと思っていると、ネギを一杯上に覆い重ねた。
 そうか、これがネギ飯かと納得しましたが、家庭でも簡単に出来ますね。隣のアベックは仲良くネギ飯をハンブンコしてご機嫌に食べていました。僕はとうとうスープを残しました。ラーメンでも饂飩でも蕎麦でも僕はスープが大好きで残さないのですが、残しました。時々寄る梅田の立ち食いうどん屋のスープは鰹節の匂いがぷ〜んときて、一滴も残さないどころか、スープのお代わりをしたいぐらい。今度、ペットボトルにスープを分けてもらおうかなと思っていますが、ここのキツネうどんは280円。そして、この有名ラーメン屋のチャーシューは900円。何でこんなに人気があるのか、とうとう納得出来ませんでした。爺の味覚がオカシイのでしょうか。印象論ですが東京と関西では、東京では値段と美味しさは比例する場合が多いが、関西では逆比例に時として遭遇する。「安いのに美味しい」、「高いにもかかわらず不味い」、僕の舌に自信がなくなりました。