樹木希林が犯人だろう

 みなさん、見ている方は多いと思いますが、旧作半額セール期間で、DVD『鬼が来た!』、『犬猫』、『茶の味』とビデオ『半落ち』を借りてきました。『ぴぴさんのシネマ日記・半落ち』は星が三つしかないので、そんなには期待してなかったのですが、兎に角泣ける映画らしいと、金曜日は面白いテレビがないので、88歳の老母と一緒に見ることにしました。原作も読んでいないのですが、年寄りには理解できる映画だと思ったのです。
 泣いてもらえばOK!、でも泣けなかったみたいですね。僕がちょっぴりウルウル来たのはラストのシーンで骨髄移植された少年が護送される寺尾聡に向かってガラス越しに無音で「イ・キ・テ・ク・ダ・サ・イ」と見送るところだけでした。
 でも、この肝心のところではお袋は半睡の状態で、森山直太郎の『声』の主題歌が流れるとむくりと起き上がり、「寺尾聡は無罪だったか?」と訊く。「何で?四年の懲役で執行猶予はつかない、むしろ厳しい刑だよ、その方がよかったんじゃあないの」、「あれ!、姉の樹木希林が妹を殺したのではないのか?」、「誰かを守るために自首したのではないか、」、「姉が妹と争って抱きしめる場面があって、それから、亡骸となった妹が布団に横たわっていたではないか、あの時、殺人を犯したので、寺尾聡がアルツハイマーの妻の首を絞めるところがなかったではないか?」、絶句です。
 老母は自分勝手に別の物語を妄想していたのですね。あまりにも二日間の謎が強調されていたので、お袋は先走って複雑に推理していたのです。謎なら、寺尾聡は誰かをかばって罪を引き受けた。そうすると、真犯人は樹木希林しかいないというわけです。成程、そのようなストーリーなら謎めいたものになります。僕も又もっと何かがありそうだと期待したのですが、確かに肩透かしされた感じでした。骨髄移植された少年の登場によって物語の大幅な転換があるのかなと思ったら、もう映画は終わり近くなってしまったというわけ。半落ち [DVD]