♪カッコウ♪カッコウ…、

僕の村は戦場だった [DVD]

僕の村は戦場だった [DVD]

 タルコスフキーの『僕の村は戦場だった』はやはり映画史上に残る文句ない五つ星ですね。批評の余地のないそれ自体として余りにも完成され過ぎている。当時30歳だったA・タルコフスキー監督の長編処女作品ですが、後年の偉大な作品群が難解で僕にとっても未消化の部分が沢山あり感想を述べることにも躊躇しますが、この映画は、その映画の素晴しさを素直に語りたくなる映画ですね。
 そして、その自分なりに語る言葉が見つかる。それは恐らく、平和な村の風景が、観る側に共通の心象風景として裡から共振するからでしょう。戦争の残酷さも抑制された葬送曲として描かれるから観る側の想いも余韻を持ってそれに重ねることが出来る。律動を呼ぶ映像の美しさは圧倒的ですが全体が音楽としての交響詩としての作品に仕上がっている。
 饒舌な反戦映画ではない。むしろ、戦争を“静けさ”で描いている。冒頭、森の中でカッコウの声がする少年は半裸のまま「聞き耳」を立てる。「ママン」、清水を汲んだママンを捉まえ、顔ごとバケツに浸けて渇きを癒す。顔を上げ陽を背にした光り輝くママンに向かって陽を浴び少年は「カッコウがいるんだよ」と笑う。平和をむしろ“音”で描いている。
 やはり、戦争映画でこの映画は忘れられない映画であろう。今、検索したら武満徹のインタビュー記事がアップされていますね。このインタビューは1987年ですね。武満徹が56歳の時で、タルコフスキーは享年54歳でした。