北京を出ないで世界を回ろう

 中国映画には官製映画と地下映画があり、後者の代表格と言えばジャ・ジャンクー監督でこの映画『世界』は今回初めて中国で公開上映が認められたもので、今現在テアトル梅田で11/26〜12/9迄、ロードショー!です。
 参照:http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/cinema/archive/news/2005/11/20051115dde018200018000c.html
http://d.hatena.ne.jp/border68/20051214
 映画の舞台は実際に北京郊外にあるアミューズメント・パーク『世界公園』でキッチュなディズニーランドといった趣ですが、チラシによると、エッフェル塔やピラミッド、タージ・マハール五重塔といった世界40ケ国109ケ所のモニュメントが46万?の広大な敷地に10分の1に縮小、再現されている、謳い文句は「北京を出ないで世界を回ろう」!
 その世界公園で働くダンサー・タオの踊り子物語なんですが、背景の公園が単たる北京を越えて今現在僕たちの住んでいるこの世界そのものの、やるせなさ、息苦しさが説得力をもって迫ってくる。そして、東京オリンピック大阪万博前後の風景がそれに重なって、<私>的な既視感に襲われました。偽ブランドの洋服を作ってしまう工場、所有者が明確でない携帯、変造パスポート、ミニュチアのツイン・タワーのように壊れないシミュラークルな世界に取り囲まれ、踊り子タオは新しい世界へ飛び立つことを時として夢見る。公園の警備主任タイシェンとの恋も暗転する。暗闇の中でタオは出口を見出したのであろうか、新作なので詳しく筋書きは述べません。この映画の間合い、映像の喚起力、僕が今まで見た中国映画の中で最高点を上げたいです。
これを機会に他の作品も観たいものです。プラットホーム [DVD]青の稲妻 [DVD]一瞬の夢 [DVD]