ロリコン社会/大人社会

 下で野村一夫著『未熟者の天下ー大人はどこへ消えた?』について書きましたが、昨日の朝日新聞の夕刊で森岡正博氏は『相次ぐ少女殺害事件』についてのコメントを寄せている。要はこの国は『ロリコン社会』で幼い心の商品化をなぜ許すか?そこに犯罪の根源を見るのです。『未熟者の天下』と『ロリコン社会』は少子化が一段と促進された社会ともつながって共通の症例が横たわっているのではないかと、僕なりにも容易に想像出来る。
 本屋での店頭雑感では、『ロリコン雑誌』は何十年前からあったし、一部のマニアックな人たちを対象に棚差しされていた。『薔薇族』と同じような売れ方だったのです。細々と息長く…売れました。それが1970年頃変わった気がしますね。ビニ本、ビデオと少女達が主要な商品として消費されたが、それでもある種の後ろめたさがあって一般市民権を得たわけでない。寺山修司の少女もアングラでした。
 1980年代に入ると少女、幼女をネタに消費するアニメ、コミックの登場もシャレめいた文脈が表で僕のイメージでは玉姫様の「戸川純」ですね、そこに批評性がありました。それが裏街道の隠花が誰が仕掛けたのか、それとも自動運動なのか玉転がしの玉が大きくなりベタなロリコン時代に突入したのではないか、
 昨日の新聞で森岡さんは現在の日本のテレビや雑誌やインターネットには、女の子を眺め回すような商品がたくさん、出回っていて、数多くの大人がそれを購買し、消費を楽しんでいるとして、嘆いて見せるのです。
 速水由紀子ロリコンは日本の「国民病」になったと指摘しているらしいが、確かにモーニング娘が登場した頃から、僕の感触では健康で健全な装いで「ロリコン商品」が表舞台に堂々とデビューした感がありました。森岡さんは、ここにきて、その流れは怒涛のように小学校低学年の女の子へと押し寄せてきたように思われると書く。

私がもっとも問題だと思うのは、被写体の女の子たちが、自分の映像がどのように実際に「消費」されているのかを知らないだろうという点である。それを理解するにはあまりにも幼すぎる。と同時に首をかしげざるを得ないのは、彼女たちの親についてである。親は、それがどういう商品となって販売されるのかを知っているはずだ。(中略)/小学校低学年の女の子の実写イメージを、性的な文脈に置いて商品化することは、たとえ親の承諾があったとしても、一種の虐待とみなして規制すべきだと私は考える。このように言うと、表現の自由を圧殺するファシズムだと批判する論者が現れることだろう。しかしながら、幼い女の子を性的な文脈に置いて商品化してまでもそこから利益を吸い上げようとする日本社会は、病んでいるのではないのか。犯罪者だけが病んでいるのではない。社会に偏在する少女への欲望を知覚しながらも、それを黙認し、少女イメージからときおり快楽を盗み取ってきた我々一般市民一人ひとりに、真の意味での責任があるはずなのである。

 正論ですね。『感じない男』の森岡さんが書くと切実さが加味される。でも、ここまでは僕でも了解出来る。問題はここからでしょう。法的な問題では処理出来得ないでしょう。と言うよりはそぐわない。仮にそんな法的規制が働いてもロリコン的なものに向かう欲望を切断でなく方向転換する道筋をつけないと、益々悪い状況になる危険性がある。
 この欲望の真の正体は仮説ですが“癒し”だと思う。癒されたがっているのではないか、成熟した大人になるのが怖いのでしょう。成熟した大人の女に向かうような欲望の転轍は、大人の男に向かう欲望と同じ位相で、兎に角新しい大人の社会を構築するしかないのでしょう。癒されたいではなく、誰かを癒したいという意識の転換の一歩から始めるしかないのでしょう。
 メンヘラだらけの世の中ですが、そのメンヘラが誰かを癒したいと心変わりをするなら問題解決ですが、鶏が先か卵が先かの論になりますね。ここで言う大人は年齢に関係ないのは勿論です。若者でも大人はいるし、年齢は大人でも子どもは沢山いる。
 それを大きく憲法問題につなげようという人がいるかもしれない。アメリカの子どもでいる限りは…。
 しかし、昨夜HNKのETV特集でみた映画『ルート181』の二人の監督のやりとりを聞いていると、イスラエルであれ、パレスチナであれ、子ども達は大人なんだろうなぁと思う。イラン映画亀も空を飛ぶ』の子どもたちは子どもであっても僕より大人の感触がありました。お正月には『MASAI』(テアトル梅田)、第二弾はベルギー映画『ある子供』(梅田ガーデンシネマ)を観る予定です。勿論、下旬は『ルート181』です。
 おおた慶文は知っていますか?はまぞうで検索したら、毎年カレンダーが発売されているのですね。いまだに店頭で売れているのか…。こんな風にコンスタントに売れているのは珍しいと思います。「ロリータ」と一言で言っても、様々なグラデーションがある。おおた画伯の少女画はカレンダーとして一家に飾っておくのに違和感がないでしょう。

戸川純 TWIN VERY BEST COLLECTION

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ピアニッシモ―おおた慶文画集

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おおた慶文(少女) 2006年度 カレンダー

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