マサイ版「スタンド・バイ・ミー」ですって、

 テアトル梅田で「MASAI」を観ました。監督パスカル・プリッソンは12年にわたりマサイの村に通い詰め2000時間に及ぶフィルムに撮影。登場するマサイの若者達はホンモノのマサイの戦士達なのです。役者ではないのです。でもドキュメンタリーでもない。そこにあらゆる国で語られた英雄物語の一端がある。ちらしの惹起文を引用します。

干ばつに襲われたマサイの村。/雨を降らせる術はただ一つ、伝説の獅子を狩り、そのたてがみを神に捧げることだった。/村に平和をもたらすために、まだあどけなさの残る少年たちは、命を懸けた旅に出る。/大人になるために。/そして、選ばれし者、真の“マサイの戦士”になるために…。

 かような英雄譚はわかっていても、繰り返し語られても、読む人、観る人、聴く人、を感動させる。ただそのためには、演技する人が説得力をもって訴えかける身体性がないと、感動させることは無理でしょう。この映画の凄さは役者でないマサイの若者を見事に映像として役者では恐らく困難であろう道具立てで役者を乗り越えた、演技であるか/ないかの狭間が不分明なほど、リアリティが立ち上がったことである。
 ライオンとの戦いのシーンで不覚にも涙ぐみました。かような場面で涙ぐみは女々しさでなく雄雄しさで、心地よいものでした。単館なので一度見逃すと観る機会がないと思いますし、DVD化されればよいとは思いますが、多分、レンタル屋さんでは置かないでしょうね。
 『ローハイド』や、高倉健の『昭和任侠伝/唐獅子牡丹』を観て心揺さぶられた経験のあるおじさん達も観て欲しいものです。忘れられた感動が蘇ります。