犀と犬

 ポール・ニザン著作集 1
 犀のマークで御馴染みのHPも粋な晶文社okatake日記によると一般書籍から撤退らしいですね。*1教科書部門はよかったみたい。やはり、実学に結びつくものでないと、「教養」は市場にならないということでしょうか、「形而上学で遊ぶ」知的遊戯の玄関口で渉猟する面白本がリストアップされていて、僕も現役の書店員の頃は、あの「犀」のマークを棚に並べて「犀コーナー」を設けていましたね。「犀ファン」の読者は結構いらっしゃったのです。その象徴的な本は勿論、故植草甚一ですね。そうそう、内田樹の火をつけた、『「おじさん」的思考』も犀のマークなのです。
 最近の晶文社のことははっきりわからなかったので、参考書、実用書に絞ってクリックすると、受験案内書がずらりとリストアップされていますね。知らぬ間に出版地図は変貌しているのだ、浦島太郎の心境です。かような受験案内書は本屋さんでよく見かけたのですが、晶文社が版元とは知らなかったのです。ホームページも二つの玄関口があったんだ、伝統ある門構えの正面玄関がなくなって出入り業者が頻繁に利用する脇玄関だけになったということでしょうか、「WONDERLANDで遊ぶ」余裕がなくなったということでしょうか、寂しいね。退屈男さんの嘆きもわかります。
 時代はやはりどんどん空洞化している。日経平均株価は一万六千円をあっさり更新して二万円台も不思議でない状況に景気が回復しているみたいなのに、バブルの再現だけはゴメンこうむりたいですね。もはや「教養」が商品にならないのだろうか、しかし、日本ではペットの数の方が子どもの数より多くなったと聞いて、僕の周りをみて、さもあらんと納得しています。ペットフード工業会の04年の調査では、犬と猫をあわせたペットの数は24000万匹以上で同じ年の0〜14歳までの子供の数より三割以上多いのです。(毎日新聞1/6、余禄のデータ)
 そう言えば、家の近くにペット連れで入れるカフェレストランが増えましたね。昨年末には犬ゲノムが解読され、人間との共通点がわかったらしい。心臓病、癌、糖尿病など人間と同じ病気に罹る。脳死者を研究材料に使われるのは色々と抵抗がありますが、犬ならば、少しは抵抗が軽減されますか、犬と人間の付き合いは一万五千年以上に遡ると言う。
 しかし、一方で少子化が進行し、他方で犬が増えてゆく、徳川綱吉も喜んでいるでしょうか。それにしても、もう「犀のマーク」が象徴する「教養ごっこ」は益々ジリ貧で復活はないのでしょうか、少子化は仕方がないにしても、「犬」の代りに「犀のマーク」を欲望する流れにはならないのでしょうかね。
 ソネアキラさんが紹介している「毎日新聞の縦並び社会・格差の現場からの連載記事」はこの国の劣化ぶりが棄民を生んでいることがわかる。
 追記:そうだ、『アデン・アラビア』も晶文社だった。Queseraさんのブログでポール・ニザンを思い出しました。犀のマークが良く似合いました。2006-01-15 - 懐手して天体観測

*1:本日のokatae日記によると正式な発表でないということです。あくまでもokatakeさん情報です。