野宿もの

オンライン書店ビーケーワン:〈野宿者襲撃〉論オンライン書店ビーケーワン:「人間」をさがす旅オンライン書店ビーケーワン:Asakusa styleオンライン書店ビーケーワン:ダンボールハウスガール
 昨日エントリーアップした吉屋信子の世界『花つみ日記』で大川から大阪城を望みましたが、『女系家族』は昭和33年の大阪風景と、映画で思いやりましたが、先日ニュースで話題になったのは、野宿者テント強制撤去でした。とくに大阪城公園は僕の散歩コースなので、ブルーシートは馴染んだ点景でした。天王寺公園のカラオケにしろ、こちらも強制撤去されましたが、ブルーシートにしろそこには小さいながらもコミュニティがあり、郵便もちゃんと届きます。この大阪城公園にも自転車修理承りますの看板が垂れ下がり、600円と通常より安い。犬を飼っているのが多いですね、釜が崎、山谷、寿町などの寄せ場に巣食うドヤも今では結構な宿泊料をとるみたいですね。月に直すと3万円弱でしょう。このぐらいの家賃で上手に探せば都内、府内でもちゃんとしたアパート・長屋の一軒屋が見つかる。問題は身元保証でしょう。
 毎日新聞『棄民の街』では生活保護の住居費は2万8千円だと書かれているが、この値段ならドヤでないところに住めるはずだと思うが実態はどうなんだろう。しかし、年金受給者で月13万円以下は沢山います。話が段々みみっちくなりますすが、そう言えばブルーシートを写真に撮った本がありましたね。松井計という『ホームレス作家』がいました。いまだに売れているのに『ダンボールハウスガール』なんてありますね。こうやって思い出すとこの手の本は結構読んでいますね。そう言えば現役の書店員の頃、ベストセラーになった本で確か新聞社系の出版社で『乞食になる方法?』なんて言うタイトルの本が記憶にありますね。
 勿論当時、ホームレスなんていう言葉はなくヒッピーとかフーテンですが、乞食という言葉がある種ロマンを持って語られたということも背景にあったんでしょう。でも今では乞食は差別語として禁じられているのでしょう。岡本かの子の『生々流転』のヒロインも女乞食になるために男を捨て都を離れます。そんな壮大な大河ドラマです。逆向けの「おしん物語」ですね、『100億円稼ごう』とか『会社四季報』が愛読書になっても、「ホームレスになる方法」がベストセラーになる気遣いはもうありえないですね。益々つまらない時代になっている。
 図書館で借りることが出来た生田武志の『<野宿者襲撃>論』を読み始めたのですが、予想以上に恐るべき本です。

彼らは(よく言われるように)野宿者が人間と見えずに「ゴミやものにしか見えなかった」のではない。むしろ彼らは、生身の人間を「ゴミやもののように」扱い「動物のように狩る」という行為そのものに昂揚しているように見える(その点で、襲撃はおそらく強姦と多くの共通点がある)。その意味で、彼らは決して「ゲームと現実の区別がつかなくなった」錯乱の上で襲撃・殺人をしたのではない。「生身の人間をゲーム技を使って襲撃する」という冷静な「確信犯」として襲撃していたはずである。(p51)

 村上龍の『インザ・ミソスープ』は読後、澱のように不快感が沈殿しましたが、本書で具体的に暴行の場面が再現されると、そのおぞましさがもう一度蘇りました。本書でも紹介されているデーヴ・グロスマンの『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫)で分析した兵士であっても相手と「目が合う」ような状況では、人は人を殺すことがほとんどの場合できない。その間に何らかのシステム、又は道具が介在することによって殺人への回路が接続されるのでしょう。しかし、野宿者の襲撃はむしろ素手であることに酔っている。その少年の一人が青木保の『「人間」をさがす旅―横浜の「浮浪者」と少年たち』(民衆社、1983年)インタビューを受けているのですが、「ベンチに飛び上がって、胸とか腹の上にドンて降りるの」「クツの先ブッジュッて沈んだから、あ、骨もグジャグジャになってるなって思ったの」と語っている。
 作者の生田武志のHPも参照して読むことにします。つづき…は又…、