岸恵子の代表作でしょ、

 世の疲れた母親に市川昆の『かあちゃん』を見たら癒されるか、それとも余計疲れるか想像もつきませんが、老母は感動して満足しておりました。まあ、子育て終えた母親と子育て中の母親では受け取り方は違うだろうが、ここは江戸の貧乏長屋の世界をメルヘンとして楽しんでもらいたい。原作は山本周五郎の短篇ですが、市川監督は豪華な俳優人を見事にキャスティングして宇崎竜童 、原田龍二うじきつよし中村梅雀、コロッケ、春風亭柳昇江戸家小猫小沢昭一、しかし、なんと言っても岸恵子の「かあちゃん」です。
 あまりにはまりすぎて、見終わった時、僕はこれで二回目ですが、やっぱし岸恵子以外では考えられない、と思いました。僕は岸恵子ってファンなんですが、もう若い頃の映画の岸恵子は全く忘却の彼方ですね。思い出さない。でも、岸恵子小田実について語る時の表情とか、そういうのはテレビを通してですが思い出すことが出来るのです。確か去年もテレビで見た気がする。僕よりうんと年上なんですよ、信じられない。
 こういう映画は好きな落語を何回となく聴いても飽きないように、いつか又見る機会があっても同じようなシーンで同じように感動するんだろうと思いました。老母はミステリーものは夜うなされる時があるし、複雑怪奇なストーリーは僕にトンチンカンな質問を浴びせるし、悪人が出ると怒るし、善人しか登場しないかような感動物語が一番いいのです。ぐっすりと早寝が出来るのです。