スクラップ&ビルド

kuriyamakouji2006-04-15

同志社大学寒梅館ホールでドキュメンタリー映画『水没の前に』を見ました。ホールは地下でゆったりとした椅子、結構大きなスペースで映画鑑賞にはぴったりのホールでした。佐藤真さんがこの映画のコメントをしていましたが、佐藤さんの『阿賀に生きる』とつながる河に生きる人々の暮らしが淡々と時にはユーモラスに伝わってきます。沖仲仕ですか、(川でもそう言うのかな?)あんちゃん、オヤジたちの水没を前に、解体して鉄くずを拾い集めたり、その喧噪と逞しさがなにやら懐かしく感じました。

 この作品は世界最大の三峡ダムの工事に伴い、2009年の完成を前に沈んでしまった町の人々の、運命に向かって見せるさまざまな表情を、刻一刻変わる町の描写とともに見事にとらえた映像だ。
 向さんという簡易宿泊所を経営する老人がいる。李白の詩で有名な四川省奉節の港で働く荷運び労働者たちが泊まるような安宿でも、向さん夫妻にとっては貴重な収入源だ。その立ち退きのため移転先の物件をバスに乗って探しに行ったり、移転補償の書類申請のため何度も窓口に足を運んだりと忙しい。
 やがて地方政府の役人の怠慢から、その書類がたらい回しにされたことが分かってくる。刻々と迫る立ち退き、しかし行く当てはまだ見つからない。老い、募る不安、行政への憤り。仁王様のように眉間に深く刻み込まれたシワに、彼の、そして多くの中国人が翻弄されてきた人生が凝縮されている。ー毎日新聞記事(2005年10月19日)『銀幕閑話:第68回 水没の前に(紀平 重成)』よりー

 紀平さんの記事はシリアスですが、三峡ダムの完成は2009年で物語は現在進行中なのです。ある人が中国の留学生がホームスティしたおり、2020年頃になるともう中国は日本を抜いて経済大国になるのは間違いない、これから北京語を勉強」しなさいと、その家の小学生に留学生が忠告してくれたと言っていましたが、別の知人はいや、もっと早く2016年頃だとしたり顔に言っていました。この映画を見るともの凄く説得力がありました。僕がこの映画を見て多少郷愁をを感じたのは、昭和30年代の瀬戸内の港町のあんちゃん、おっちゃんたちを思い出したからです。そしてこの港町の夜の市長と言われていた男は戦後この町の屑鉄をかき集めて財をなしたのです。
 ラストシーン近く発破がビルを破壊する。このようなプロジェクトは13億人欲望の坩堝の中でとどまることをしらないであろう。破壊と建設、その繰り返しでしか生きられないのか、