本を生かすも殺すも棚しだい

 『水没の前に』を観たついでに大学の情報センターに寄ってカードの更新をしてきました。ウラゲツさんが紹介していた『未来』の4月号「書店空間の現在・過去・未来」を調べてジュンク堂池袋店中村文孝インタビュー記事を取り出してもらいました。そのやりとりで、女の子に注意されました。「ここは図書館なので、大きな声を出さないで小さな声で喋って下さい」って、そんで囁くように「ゴメンね」っと言ってしまったのですが、先日、ある図書館で僕が同じような注意を別の人にしてしまいました(笑い)。
 目どころか、耳も遠くなったんですかね、声が大きいとよく言われるようになりました。

中村 […]棚については、常に矛盾が出てきます。それをおかしいと思いつづけることが大事です。完成はない。そしてどこかで、あるポイントを超えたときに矛盾点を解消する方策が出てくる。でもそれによってまた別の矛盾点が出てくる。そのときには「いまはどっちだ」と考える。どちらがプライオリティが高いか、ということを考えるのです。(中略)
 さきほどカリスマ書店員という言葉が出ましたが、書店員が本当に一人前になるときとは、不要な本を切れるようになるときです。必要な本を入れるまではアマチュアなんです。売れるとリピートオーダーするけれども、一冊の本のお客さんが無限にいるわけではない。それなのになんで繰り返し発注なのでしょうか?返品できるからですよね。それから、商品がわかっているということは、この本はどういう本かということを知っているということではなく、この本がどうやったら、いくらで、どの形なら売れるかまでわからないといけません。そこまでわかってはじめてプロといえます。

 要求が高いですね、インタビューアーはipodのようなモノの所有にこだわらない音楽のようにテキストをダウンロードするかたちについて問う。

中村 音楽の世界はそうなっていますね。たしかにネットでダウンロードできるけれども、ちょっとややこしいものはないですから、専門店化して生き残るという方向はある。でもこの専門店というのは音楽の場合、廃盤が多いから、新譜と中古がー緒なんです。そうすると和書の専門店化というのは、取次ルートでやるだけでは絶対になりたたないということになりますね。
 便利で早ければいいということだったら、ネット書店のシステムの中味が優れてくればくるほど、リアル書店は勝てなくなる。データベースを共同利用することにより、リアル書店も最低限の土壌ができますし、リアル書店とネット書店は、それぞれの特性があり共存するというのが前提ですが、その上でリアル書店を救っていく土壌があるとすれば、先ほども申しましたが、新刊と古本の融合ということではないかと思います。それをやるための仕組み作りに、いまの再販制と委託制は足かせになりますね。 再販制については、形を変えて残すことには賛成です。出版物を消費情報財と文化保存財にわけて、文化保存財としての書籍の一部を再販商品として認め、そのかわり再販商品には十年程度の一定期間製造義務を負わせる、ということにする。あるいは新刊委託期間のみを価格拘束する時限再販制ということも考えられます。ただ現行のような委託制については、廃止したら一時期大変なことになりますが、考えなおすべき時期にきていると思います。委託配本制ではなく注文買切制に転換し、書店が配本を受託する立場から発注者の立場に変容することが肝心です。そして出版社もそれに応じた卸価格の変更と、返品入帳のルールを検討してほしい。リスクに応じて利益配分するシステムにすることによって、販売力に応じた仕入れ能力を持つ書店が、それに応じた利益を確保できるシステムを作ることが大事ではないでしょうか。文化か利益かという二元論ではなく、利益を生み出さない文化貢献は決して長続きしないということです。ボランティアで働くのがあたりまえというような環境になるのは、本当にとんでもない間違いです。売れるというのは最低限の必要条件、モラルなんです。委託配本制のもとでは、書店は小売業とはいえないんです。出版社がメーカーじゃなくて、取次が問屋じゃなくて、書店が小売じゃなければ、あとはメーカーである著者とエンドユーザーである読者が直接結びつくのは自然な流れということになってしまいますね。そうならないためには何か必要なのか、ということです。                     

 「売れるというのは最低限の必要条件、モラルなんです。」って言うのはその通りでしょう。
 ちょうどこのPR誌で同じ「読書特集2006」で「図書館の民営化問題」についてのテキストが掲載されている。住んでいる街でも今、公民館の民営化問題が論議されています。図書館の民営化問題はは本という土俵で「本屋」と「図書館」で、リンクした施策があってもよい。どこかの図書館で図書館が本屋をやると言う案がありましたよね、従来の出版流通の枠内でない論議がもっと活発に行われてしかるべきでしょうね、取り次ぎの日販が映画館経営をやるなら、本屋さんが映画館をやるとか、映画館が本屋をやるとか、せめてその程度の触手は伸ばして欲しいですね、レンタルビデオのTSUTAYAは僕の街にも昨年、大型書店として出店しましたが、本屋でなく、電鉄会社でもいいからこの街に映画館が欲しいですね。
 六本木の青山ブックセンターが新装されますね、ウラゲツさんのレポを読むと東京だからこそ成り立ちうるコンセプトと思ってしまう。