絶版新書?

 新書マップで検索してもないみたいだし、もう手に入れることは困難だと思いますが、武田徹さんが日記で再三言及していた「メディア・リテラシー」に関するテキスト、四方田犬彦の『週刊本10ー映像要理ー』(朝日出版 1984年刊)を図書館で借りることが出来ました。このシリーズは興味あるライナップですが、新書ブームと言われている現在、この一冊はどこかの版元で再版する企画はないのでしょうか?文庫でもいいです。アマゾンのユースドにもデータがないですね、日本の古本屋 で検索したら、5250円の値がついていました。この週刊本は500円です。10倍の値ですか…。
 巻頭で作者が、いかにしてこの本を執筆したかを宣言している。そして、深い尊敬と共感をこめて本書を金井美恵子に献じている。武田徹さんの貴重な文献としてのオススメなど、気になっていた一冊なので、どんな本かと想像していたら、暫し、緊張が脱力してしまった。だって、チャプターは第二章「人はなぜ女性性器の映像にとりつかれるか」、第三章「女性性器はこれまでいかに映像化されてきたか」、第四章「人は女性性器の神話からいかに解放されるか」、第五章「人は生涯にいくつの女性性器を見るか」なのです。そもそも四方田犬彦がフランスのアンリ・マッケローニの写真集『とある女性の性器写真集成百枚 ただし、二千枚より厳選したる』に感銘を受けて執筆されたもので、本書の原型となるのは『ユリイカ』1984年4月号(写真特集)に発表された『人は生涯にいくつの女性性器を見るのか』というエッセイです。本文の最初の1ページを引用します。

 桜桃のたね。つぼみ。若芽。皮をはいだ胡麻。巴旦杏の実。ミルトのショウ(僕の注:漢字変換なし)果。雌蕊。鍵の管。

 貝の二個の殻。シドンの紫貝。熱帯の珊瑚。

 すみれ。うに。ひとで。二重の噴火口。石専(僕の注:くさかんむり、でアオサ)。渦巻き。まぶたのなかに閉じこめられた動き。光り、湿る目。唇をもち、舌をもち、ばら色の口蓋をもった口。円。輪。二等分にされた三角形。卵形。楕円。あらゆる色の石を爪がとり巻いている卵形の指輪。
 モニカ・ウィッティグ『女ゲリアたち』(小佐井伊二訳・白水社・1973)より。 

 まあ、せっかくだから読んでみますか…。 
週刊本 10