誰かに伝えたい、そんな映画、本を見たい、読みたい

ペイ・フォワード (角川文庫)

ペイ・フォワード (角川文庫)

 先日、多大の期待をもって『ダ・ヴィンチ・コード』を観ました。信じられなかった、退屈だったのです。僕の体調の所為なのか、感性が麻痺してしまったのか、こんなにも世界中の話題になっているのに、何故、カソリック協会が反対したり、中国が上映禁止にしたのか、映画以外の脇道から考えてもはっきりとわかりませんでした。恐らく僕はこの映画に宗教的なものを一切感じなかったからでしょう。僕は確固たる宗教を信じているわけではない。でも、「祈り」の感情は信じている。それはその回路なくしては世界に触れることが不可能だと思っているし、「驚き」も生まれない。僕にとって「祈り」も「驚き」も世界が出現する依代なのです。まあ、謎解きは僕の大の苦手で眠くなるのです。頭が痛くなるし面倒になるのです。事実、瞬間的に眠っていた可能性が大ですね。まあ、これ以上、僕はこの映画について書く資格はないですね、原作を読めば又、違った感想を述べるかもしれないが、少々原作を読む気が殺がれました。
 それより、その前に見た映画『ヨコハマメリー』がまだ上映中ですね、この映画には「祈り」があった。僕にとってこの二作を比べたら何の躊躇もなく『ヨコハマメリー』 に軍配を上げる。僕だけではないはずだ。こちらは、金はないけれど、たっぷり時間をかけて生身のメリーさんを追跡した手触り感が堪らなかった。元次郎さんのシャンソンもよかった。見終わった時でも殆どの人が蹲ったままで席をなかなか立とうとしなかった。「ダビンチ・コード」はエンディングロールを背に立つ人が多かった。確かに予告編やネットアップされているコンテンツは綺麗で、刺激的で、どんな映画だと期待が大きく膨らみましたが、僕の琴線がどこか歪なんでしょうか、
 そんな危惧を覚えて『PAY IT FORWARD』(角川文庫)を読んだら涙腺が緩んでしまった。あまりにもできすぎのストーリーなのに、素直にこの物語を信じたくなったのです。信じたいと思ったのです。というのは、ささやかだけど、僕なりに何かが出来そうな気が、ちょっぴりしたのです。僕のへそ曲がりのアイロニーが引っ込んでしまったのです。これは映画にもなっているのでしょう。映画は未見だけど、原作でこんなにも、僕の琴線をまっとうに揺さぶってくれたのだから、映画は観ない方がいいなぁ…。
 映画も原作もいいって言うのは珍しい、どちらかを読んで見て、良ければ、それに浸った方が賢いでしょう。