読者共同体の実践

 保坂和志さんの保板を見て今気がついたのですが、こんな情報がアップされていました。
保坂和志があなたの小説を講評します。月に一作品限定、200枚まで一点5万円也。詳しくはinfo@k-hosaka.comまで
 すごくいいことですね、生原稿読むことは大変ですが、その上で講評するのですから…。僕でも知人から生原稿を読んでくれとの要請が、かってありましたが、ヘタに批評したもんだから、絶交のような状態になったことがありました。そうかと言って「面白かったよ…」の一言で片づければいいのですが、そうもゆかない。
 だから内容以前でとやかく社交するわけです。こういうのはお互いに不幸ですよね、上のがぶんさん&保坂さんの広報は、そのような社交を遮断して作品批評に徹底出来る。プロとしての批評が五万円として交換される。いいことじゃぁないですか、本当はこういうことはプロの文芸評論家がしてもいいですよね、まあ、大学に奉職している方が多いのでそんな生業が認められるかどうかですが、マス・メディアを通しての書評が稿料となって戻ってくるわけですから、個人の原稿をお金をもらってどうどうと講評してもらってもいいでしょうね、こういう個人対個人の関係で出版業界の新たな関係を構築することに特に版元は意識的であって欲しいですよね、
 保坂さんたちがチームを組んで小島信夫の『寓話』を自費出版しましたが、今回のこのような講評スレも作家として誤解を恐れず、直に読者と真摯につながろうとする読者共同体への当事者意識だと思います。

もともと『寓話』の個人出版を考えた理由は、現在私が「新潮」に連載している「小説をめぐって」かあるいは他のところかで『寓話』についてまとまったことを書きたいと思ったからです。しかし書いても元の小説が読めない状態だったら意味がないと思い、『寓話』について書く前に『寓話』が読める状態を作ろうと考えたのですが、こうして完成した本を前にすると、『寓話』について書く以上のことをしたという気持ちになっています。

 『寓話』を購入した中に挟み込んでいた保坂さん記名のちらしから一部引用させてもらいました。十人強の素人仲間でこんなにも立派な本が出来上がるものかとびっくりしたのですが、PCのツールとしての進化の恩恵でしょうね、上の講評も相手の了承でネットアップ出来ないかしら…。書く以上のことをしたという気持ちになった気持ちはなんとなくわかります。