アイホー!ワーキングプア

オンライン書店ビーケーワン:成功したけりゃ嘘をつけ!オンライン書店ビーケーワン:栗林忠道硫黄島からの手紙オンライン書店ビーケーワン:闘争の最小回路
 昨日、見るつもりだった「NHKのワーキングプア2」をビデオニュースドットコムで鈴木邦男宮台真司のやりとりを聴いていたもんだから、うっかりと見過ごしてしまいました。でも、leleleさんの嘆き『…なんだこりゃー!』を目にして、見るまでもなかったかなぁと慰められました。
 このエントリーで親会社、子、孫…会社の搾取構造を書いていましたが、会社が大きければ大きいほど、その究極は国そのもので、恐らく愛とは無縁の「愛国」で、既得権益死守ための方便としての「愛」であろう。「美しい国」だから愛するのはいいとこ取りの心性でしょう。「既得権益のための愛」なのです。自分の母ちゃんが美人だから、大好きなわけではない、へちゃむくれでも好きでありうるというのが人の心の崇高なところです。
 「醜い国」でも愛する、そこから「憂国」の感情が生まれ、なんとかしなくちゃぁという、自分の心に宿る正義を貫き通す。そのことで正義が生まれる。正義は上から与えられたものではなくて、そのような裡からこみ上げる情動から行為となって顕れるものでしょう。クリントイーストウッドの『硫黄島からの手紙』は、そのような正義について強いメセージを発信している。
 僕が下の赤木さんの『論座 1月号「現代の貧困」』の論考に敷延して、ブログでの赤木さんの敵は『Aの「富裕層」ではなくBの「安定した労働者層」なのです。と書きましたが、左翼論壇はA「富裕層」に対してBとCの連帯を主張するわけですが、そんなのは有効でもなく、欺瞞だと言うわけです。そうでなくて、「安定した労働者層」×「不安定な貧困層」の問題として捉える」、それに対して僕は少なからず違和を表明したわけですが、
 leleleさんの親、子、孫の連鎖で言えば、Bは「安定した親会社の労働者層」で、その危険と損失を子に押しつける、子は孫に押しつけ、……、最終的に一番悪いババを抜くのは社会保障など保護の対象としてカウントされていない、健常者の若者、特に男性っていうことになるのでしょう。そのことは凄くわかる。
 例えば昔、大手の製本会社でアルバイトをしていた頃、出稼ぎ労働者と一緒に働くことになることがあった。僕が教育の丸投げをされるわけですよ。通常、一人で出来る仕事を僕よりうんと年上だし、二人でやってもらうわけ。当然、僕も作業をしながら、彼等に仕事を教えて行く。だけど、時給は僕より高い。でも会社サイドから言えば、政府から支援金が出るから実際、仕事の段取りが悪くとも大目に見る。外国からの研修員制度の悪用も似たようなものです。僕は中国の人、イランの人とよく3Kの仕事をしましたね。そのような法律すれすれの抜け道、危険は人材派遣会社が工面する。何かがあっても本丸の親会社は危険に曝されることのないシステムを作って社員一丸となって既得権益を守る。
 例えば1980年後半からアルバイトは「協力社員」という名前で呼ばれ始め、直接、親会社がアルバイトを採用するのではなく、単純労働でも人材派遣会社が通常になった。現場で親会社の社員と協力社員が一緒に仕事をすることがある。そうすると、時には仕事のやり方を巡ってトラブルことがある。そんな時、同じ現場一筋の古手の協力社員と新人の正社員が喧嘩すれば、喧嘩両成敗ではなくて、協力社員が首になる。
 赤木さんはよく弱者という言葉を使いますが、補助金なり、支援金なり、国や地方自治体から援助金が出る弱者なら積極的に抱え込んだり、正社員として採用しようとする。でも、なんらそのような対象にならない弱者を本当の弱者と赤木さんはカテゴライズしているのでしょう。そこのところを切り込んだ「ワーキング・プア問答」にならないと実態が浮かび上がらない。
 NHKもわかっていると思う。NHKそのものをドキュメントすれば、その親、子、孫のシステムが見えます。別に他の大会社、役所をドキュメントする必要性はないのであって、足元を自己検証すれば、働いても働いても「生活保護受給者」並を稼ぐのが大変だと言う、真面目過ぎる若者達が自分達の傘下で汗水たらして働いている現場を見ることが出来るでしょう。
 前に、ここのブログでも書いたことがありますが、駅のホームでオバチャン達が「障害者手当て」のことについて喋っているのに居合わせたことがありました。興味があるので耳をそばだてたら、要するにいかにして障害者手帳をゲットするかの戦略について語っているのです。何か近所のオバチャンが上手に立ち回って行政から障害者手帳を獲得した。又、そのオバチャンが自慢げに言うわけですよ。こんな本もありましたね、確か、この話を聴いて僕は興味を覚えこの本にレビューを書いていました。http://www.bk1.co.jp/product/2291760/review/216064
 要は額に汗して働く真面目な若者達が心理的にも、経済的にも追いつめられていることです。一方でオレオレ詐欺のようなものがある。嘘をつかなくとも、マットウに生きれば経済的に社会が受け入れてくれる基盤がちゃんと稼動していれば赤木さんもナットクが行くと思う。
 相変わらず道路族のような議員が暗躍する時代背景の中でそのような既得権益者を攻撃しながら、こと、その攻撃の矢が自分に向かうと、巧妙に論陣を張って回避する、そのことに腹立たしさを感じているのでしょう。まさに悪賢いヤツがリスペクトされているといった状況が無視できないと言ったところでしょうか。
 ちなみにタイトルのアイホーは丸激で、神保哲生さんが最後に、一言、「鈴木さんの邦男の邦は国でなくて「愛邦」ですね」とオヤジギャグをカマしたのですが鈴木さんは喜んで「アイホー」っていうことになったのです。
 そうそう、ソネさんが参加した本『成功したけりゃ嘘をつけ!』が店頭に並んでいましたよ。宣伝懐疑 - うたかたの日々@はてな
 eireneさんのブログから知ったのですが、こちらの本も興味があります。http://d.hatena.ne.jp/eirene/20061210/p1