撒き餌の白魔術
年末から正月にかけて黒魔術的なエントリー(貧困・ひきこもりなど)が続きましたが、やはりそのようなネガティブな情念をポジティブな白魔術的なものに変換することは確かに大切なんだろうね、
ちゃんとした正規雇用からはじき飛ばされて、今で言うならさしずめフリーターとして音楽活動をせざるを得なかったモーツアルトが、だからこそあのような軽妙な旋律を奏でることが出来た秘密、多分、黒魔術と白魔術とはつながっているということ、
そんなことを茂木さんは個別と普遍の関係を求めて ー白魔術の手ほどきーで語っていましたね。このMP3の音声ファイルでは「白魔術の手ほどき」だけでなく、ブログについても熱く語っていました。
もし、夏目漱石が今の時代にいたら、ブログを絶対やっていたはずだと、もの凄くブログをポジティブに捉えています。茂木さんの『やわらか脳』はクオリア日記を骨として単行本になったものです。
去年、新風舎等の賞を冠した共同出版の「自己表現ビジネス」の問題が取り上げられましたが、ブログは無料でもやれるのだから、自分のブログで様々なパフォーマンスを繰り広げてやったほうが断然効果があると思う。単に本になれば様々な人たちが読んでくれるというのは、何の根拠のない幻想ですよ。
茂木さんの本書は七年間も書き続けたブログの背景があります。そのようなネットとリアルの関係問題はもっともっと、ポジティブに考えたいですね。毎日新聞が連載を始めた「ネット君臨」は、暗い黒魔術のノリではなく、白魔術のノリでやってもらいたいですね。この記事を読むと、リアルなマスメディアのネットに対するイヤな怨念が感じられますよ、
そのような文脈の一つに著作権法上の問題もありますが、50年以上生き延びる作家は漱石を始めホンの一握りでしょう。70年に著作権を伸ばすより、逆に縮めてネットに無料配信する流れの方が、作家にとっても出版業界にとってもより良い方向になることは間違いない。エビでタイを釣る豪気さがないと、文化は沈滞しますね。何のための著作権法になってしまう。撒き餌の精神ですよ。
というようなことを書いていたら、てるてるさんから、昨日のエントリーにコメントがあって、夏目漱石の「こころ」が榎本ナリコさんによって漫画化されているとのこと、やはり、漱石って、なりますね。そのような文化のバトンリレーが出来うる環境設定が本来の著作権法の主旨でしょう。単に既得権益を保護するものではない。
僕はまだこのマンガを読んでいないが、てるてるさんがコメントしているように、現代の貧困の悩ましさは漱石の時代には「世捨て人」を許容し、リスペクトしていた「豊かさ」があったが、今の時代にはそれが片隅どころか、見えない存在として排除されつつあるという怖さでしょうね。
茂木さんの白魔術は多分その辺の悩ましさにアクセスしようとする試みだと思う。
貧しさを 豊かさで織る 白魔王
僕はそのような「世捨て人」の占いなら、占ってもらってもいいかなとは思うが、ぎんぎらぎんの金にまみれた豊かさそのものの占い師に占ってもらいたいという気にはなりませんね。さりげなく静かな声で語る人がいいですね。