週刊ブログ大賞/物語を売る会社

 僕はミクシィで『週刊本』のコミュに入っているのですが、フリーペーパー『WB』の三月号は「愉しい文学」で、古田日出男、中森明夫重松清金原ひとみアルベルト・モラヴィア、山本動物、高原英理斎藤美奈子生田武志、上野昴志、池田雄一、糸圭(すが)秀美、大杉重男大塚英志+七字由布と、僕の知らない人もいますが、そうか、今の文学事情ではかような人達が執筆しているんだと、目を開かれるところがありましたが、下記の『週間本』のデータの執筆陣もこうやって俯瞰すると、色褪せた感じはしないで、とても新鮮な感じがします。そのコミから拝借したデータです。
 ♪週刊本刊行リスト】1.山口昌男『流行論』 2.田中康夫『感覚の論理学』 3.日比野克彦『HIBINO SPECIAL』 4.ジミー・ネルソン『ワード・ウォッチ』 5.ニンカム・ブープ『女子大生を責めないで』 6.坂本龍一『本本堂未刊行図書目録 書物の地平線』 7.平岡正明河内音頭・ゆれる』 8.オフプリント『'85幸福手帖』 9.オフィス01『ダブルスクール術』 10.四方田犬彦『映像要理』11.ニンカム・プープ『反風俗営業法 世紀末性戦争の行方』 12.ピブリック『インゴロジー入門 その筋言語のプロ意識』13.篠山紀信微分』 14.立松和平『デジャ・ヴュ』 15.細野晴臣+吉成真由美『技術の秘儀』16.中上健次都はるみに捧げる』 17.磯崎新ポストモダン原論』18.橋本治『根性』 19.今川忠雄『少女現象』20.太田眞一『長島茂雄ユートピア』21.島田雅彦『認識マシーンへのレクイエム』 22.小田晋『グリコ・森永事件』 23.尾辻克彦『超プロ野球』24.泉麻人『無共闘世代』 25.岸田秀『希望の原理』 26.ねじめ正一『咲いたわ咲いたわ男でござる』27.秋山さと子『メタ・セクシュアリティ』28.野々村文宏+中森明夫+田口賢司『卒業』29.筑紫哲也『新人類論』30.渡辺和博『ホーケー文明のあけぼの』31.嵐山光三郎『黄金意識』32.川崎徹+中野収ほか『大学学』33.藤本義一『サンキューとベリマッチ』34.伊藤比呂美『知死期時』35.フェリックス・ガタリ+田中泯『光速と禅炎』36.丹生谷貴志ほか『天使と増殖 Ding an sich』 37.鴻上尚史『SAY−SHO』 38.高杉弾『霊的衝動』39.四方田犬彦平岡正明『電撃フランク・チキンズ』 40.岡田節人田原総一朗『細胞に刻まれた未来社会』 41.山口勝弘『パフォーマンス原論』42.天野祐吉『巷談コピー南北朝』43.山崎浩一『早熟カリキュラム』 44.一倉宏+李泰栄『ユーク』
 ◆『WB』で中森明夫重松清の対談は中森が週間本28号『卒業』を持って始まる。編集者は先頃亡くなった伝説の編集者「中野幹雄」さんなのです。ふたりで、中野さんの思い出を語る。とにかく面白いエピソードがふんだんにあるのですが、出版社には劣化しないコンテンツが一杯あるのだから、それを編集の妙で再利用することを考えてもいいと思う。例えばテキストを加工する楽しみで、中森が「重松清vs獅子文六」みたいなことと言っちゃっているが、そういう本つくりは確かに一考に値する。文学全集って今では売れないですが、ブックオフなどでは、105円で購入出来たりする。結構、2人作家が収載されていますよね、それを今の現存の作家と抱き合わせで、編集する。こういうのは僕のような素人考えでも思いつきます。「三島由紀夫×○○」、「松本清張×○○」、「開高健×○○」、「司馬遼太郎×○○」、「山本周五郎×○○」、「池波正太郎×○○」、「岡本かの子×○○」、など、考えると切りがないですが、その○○さんを誰にしようかと想像するのも愉しいですね、まあ、「岡本かの子」に対して「瀬戸内寂聴」ではあたりまえすぎて芸がないし、新鮮さがないですが、「樋口一葉×綿矢りさ」とか、いいですね。

(中森)作家は生き延びると思うんですよ。メディアがどう変わろうと。アナログレコードがCDになるときにいちばん売れたのはビートルズだったように、結局はアーカイブを持っている者が強い。だから、出版社にとっていちばん大きな選択は、上場しなかったことだと思う。もししてたら、いちばん狙われやすいですよ。ホリエモン騒動を思い出せば、わかるよね。コンテンツいっぱい持ってる。資産持ってる。社員の給料やたら高い(笑)。
(重松)村上ファンドが角川を狙いましたよね。
(中森)新潮社とか文春は、上場したらまっさきにねらわれますよ。テレビ局だって買われるんだから。出版社の上場を阻んでいるのは、じつは「作家の前借り」という制度だとぼくは思うんだ(笑)。だって、株主に説明できないじゃない?誰とは言いませんが、前借りで家建てて、死んだ途端に更地になっちゃった埴谷雄高とかね(笑)。あれほど自作を文庫化しないってかたくなだったのに、死後すぐに講談社文芸文庫にされちゃうし。でも、その文庫化した『死霊』を宇多田ヒカルが読んでるわけだから……。埴谷の“死霊”があの世で「ぷぷい!」って笑ってんじゃなかな(爆笑)。
 物語は生き延びていきますからね。だから近い将来、出版社はなくなって、物語を売る会社になるかもしれない。本は、そのうちの紙部門でつくる。百科事典がぜんぶROM化したじゃないですか、あれと同じで、出版社はコンテンツを管理する会社になるんじゃないかな。でも、編集者って絶対必要だと思うんですよ。編集者の数は今の十分の一になり、一人が十倍の給料をもらうようになる、と。
(重松)編集者が個人的に作家と契約するかもしれない。
(中森)エージェント的な感じね。いまの時代「カリスマ」と呼ばれてるのは、ほとんど編集者的な仕事のひとたちなんですよ。本屋もそれに気付いて、本屋大賞を、「本のソムリエ」っていう言いかたにしましたけど、そういう感じ。ワインをつくるわけじゃないけど、お薦めする。DJもそうだし、スタイリストもそうですよね、服をつくるわけじゃないんだから。

 成程ね、アマゾンをはじめbk1など、ネット書店ではレビューを投稿させるシステムで、「誰でも参入できる、本のソムリエ」体験をウリにしたわけでしょうが、僕自身もbk1に投稿していますが、最近、ず〜とズルしています。だって、一体何人ぐらいの人が僕のレビューを読んでその気になるのか、疑念が生じているし、そのような啓蒙臭さは僕に似つかわしくないし、投稿しようと言うエネルギーが段々を減退していることは事実です。
 でも、直截にレビューを書くより、僕のブログで紹介した本をネタとして消費した演出の方が反応があるとの認識がありますね、だから、bk1さんに、僕のプロフィールが紹介されたとき、あえて、「ブロガー」を正面に出した「本のソムリエ」のようなパフォーマンスを考えてもいいのではないかと提言しましたが、感応してくれなかったみたい(笑)。「週刊ブログ大賞」のようなものです。
 でも、レビューというフレームではなく、本をネタの一部として取り上げた方が意外と、その本に関して興味がそそられるということがありますね。啓蒙臭さがあると、どうしても抵抗があると言うのがあるのではないでしょうか。
 『週刊本』のバックナンバーは図書館で読むことが出来るはずですが、コンテンツをyoutubeのように気楽にアクセス出来るようになればいいですね、アマゾンの「なかみ検索」は本を購入すればシリアルナンバーをもらって、ネットで自由に全文閲覧出来る機能でしょう。
 市場に出ている本だけでなく、絶版本のコンテンツを「なかみ検索」出来るサービス、例えば、四方田犬彦さんの新刊を購入すれば、上に紹介した週刊本の10号『映像要理』のコンテンツのアクセス権(なかみ検索)のシリアルナンバーを一週間限定で与えるとか、色々な工夫が考えられる。
 参照:2007-03-23