「希望」という商品

オンライン書店ビーケーワン:トゲトゲ
注:例えば、ここをクリックすれば、『トゲトゲ』の一部立ち読みが出来るわけですよ。
 ◆n-291さんが、共同出版社問題で、新風舎のことを取り上げています。何か旧聞と言う気もするほど、次から次への情報の荒波にもまれて忘れかけていました。こうやって、石井政之さんの渾身のレポートを読むと、何故、かような問題が浮上したのかと検証の気付きを与えてくれますね。
 ただ、残念なことに、このような記事が中々マスメディアに掲載されないことです。会員制のネットでは、かような質の高い記事がアップされているのですね。途中までは無料で読めるのです。でも、続きは会員登録が必要です。
 それは、そうと矢面に立っている新風舎でアマゾンのbooks検索をすると、100%ではないけれど、多分、30%ぐらいの立ち読みが出来ますね。でも、検索してヒットしたのは800件以上と膨大な点数。これを一点ずつ「立ち読み」すれば、新風舎がどんな「本作り」をしたのかが、一応、検証できます。
 まあ、このようなクールな検証ではなく、とにかく、ヒーリングとして、又は「夢を買う」心持で買い物をするのなら、「安い」と思う人もいるかもしれない。ただ、かような出版事情は知っておく必要があるでしょうね、月間、5000点以上の新刊が発売されている。右肩上がりの売上げ増ではないのに、出版点数だけは増えているのです。
 その摩訶不思議な連立方程式の一つに「再販維持制度」があるわけですが、本情報誌「ダヴィンチ」では、宮台さんも書いていますが、チェックしているのは500点なのです。まあ、紙媒体としては1000点ぐらいで充分でしょう。後はネット配信で事足りる。それが僕の見取りですね。
 まず、本は売る以前に、「表現行為」という欲望を表現者に買ってもらうんだという逆転の発想を新風舎はビジネスモデルとして提示したわけでしょう。そのこと事態は別段、悪いことではないと思う。
 ただ、そのことをはっきりと著者である「お客様」に明示すべきだったと思う。でも、有名作家のものや、一応の売上げ部数が見込めるアイテム達と同じ目録に掲載したりしているから、そんな風に説明しても?マークがつくかも知れない。
 出版流通の基礎知識がないと中々理解しがたいことかも知れない。有名作家と同じ線上で、書店営業してくれているんだと、いいように解釈するでしょう。そんな夢を揺さぶったり、警鐘を鳴らすことは、そもそも期待できない。
 でも、取次扱い、国会図書館に献本、そして、アマゾンの「立ち読み」と、バーコードのない自費出版ならありえない出版流通上のパフォーマンスが提供されることは事実なのです。
 本屋の店頭になかったと言いますが、本屋の現場では、例え、大出版社の新刊でも、その本屋の判断で棚に並べないで、即返品と言うこともあるのです。
 僕が第一番に調査するとしたら、契約書が初版部数800冊とあれば、現物の確認をしますね。出版社で、頭痛の種の一つに倉庫料があるのです。まず、それが第一歩でしょう。
 委託制度、再販維持制度で下支えされた出版流通制度から、買い切り、値付けは勝手に本屋さんで出来るようなるシステムに移行すれば、かような「新風舎問題」は風通しが良くなりますよ。
 現在の出版流通制度の功罪を上手に生かしたビジネスモデルを構築したわけで、言って見れば、新風舎は「委託・再販維持制度」に守られているわけです。そこの出版システムにメスを入れなければ、何の根本的な問題解決にならないと思う。
 今では新風舎の出版点数は大出版社を追い抜いているのでしょう。売れなくても利益を上げることの出来るビジネスモデルを作ったことは凄いことですよ。
 「自己表現ビジネス」を現行の出版流通システムに最適化したわけで、著者が「最初のお客様」なんですね、勿論、例外はありますが、リスク回避をしたビジネスなんでしょう。出版って、本来、ハイリスク、ハイリターンのビジネスなのです。それとは違うビジネスモデルを提示したわけでしょう。
 結構、問題は単純だと思います。