この国が立ちゆかなくなるって、ホント?

オンライン書店ビーケーワン:下流志向
 内田樹センセイの『下流志向』は、俗流若者論を批評する後藤和智さんとか、方々で取り上げられているのですが、特に塩津計さんのレビューは激烈ですね。それに対比してyama-aさんのレビューを読むとその視座の違いが際立ちます。
 でも、まだ読んでいません。先日、会った子育て奮闘中の奥さんが、この本は面白い!って言っていたから、読もうと思います。今のところ、なんともコメントをしようがなく、今日、更新された赤木智弘さんの「深夜のシマネコ・若者の貧困を知ることかは逃避してはいけない 」を読みました。性格的に「イラチの僕」は赤木さんの語り口や、「ウェブ進化論」のような論調にシンクロする部分があるのでしょうね、内田さんの批評は大まかのところ理屈ではわかる。感情なんだよね、勘定で見切れない部分、もし、仮に勘定でこの国に貧しさが存在しないと認めても、「豊かさの気分」が段々と希薄になって行っていることが問題で、
 例えば先日、病院のPSA検査で数値が前回より多少上がっていた。数値そのものは現段階では問題がないですが、上方か下方かの方向指示が問題なんですよね、担当医にそのことを言ったら苦笑いしていました。先日、茂木さんのクオリア日記・音声講義で「記憶」は過去の思い出を引き出すことではなく、常に未来系で更新されるものだと言っていましたが、その通りだと思う。
 年収200万円とかPSA数値が0.2であっても、未来に向かって再構成された文脈で、その数字の意味、正確には記号としての意味ではなく、象徴界としての「言葉」が、問題で、記号の数値によって「貧困問題」は語れない。
 少し、脱線しますが、電車の行き帰りに斎藤環の『生き延びるためのラカン』を読んでいたら、面白さに、時々笑ってしまった。「知的に早熟なら中学生でもすいすい読める」ということです。まあ、そのことに関しては保証の限りではないが、確かに声を出して台詞っぽく喋ってもいいかなぁっていう文体なのです。そもそも、この声(音)が、本書のキーワードでもあるわけで、ちょいと引用してみよう。

 じゃあ、言葉はどんなふうにつらなっているか?意味で?いや、そうじゃない。意味というのは、実は言葉のイメージ的な側面に過ぎない。言葉の本質は、「音」にある。そういわゆる「シニフィアン」だ。そろそろやっかいになってきたね。でも簡単に済ませておこう。
 いいかい。言葉には二つに側面があると考えてほしい。ひとつはシニフィアン、つまり音で、もうひとつはシニフィエ、つまりイメージ(=意味)だ。言葉と対象物、というふうに考えてはいけない。それだと。言葉はたんなる「記号」になってしまう。ここで大事なことは、シニフィアン(音)とシニフィエ(イメージ)の結びつきには、なんの必然性もないということ。それから、シニフィアンが喚起するイメージには、かなり幅があるということだ。たとえば「ハト」という言葉が、ハトという鳥のイメージと同時に、「平和」とか「祝福」のイメージにもつながるようにね。
 言葉は記号じゃない。むしろ言葉はシステムだ。記号はその対象と、一対一の固定された関係を持つことで、独自に意味を持つことができる。言い換えるなら、記号どうしはなんのつながりも関連性も持っていない。
 でも、言葉はちがう。言葉は、最初の章でも話したように、「象徴界」というシステム全体として機能している。単語が意味を持つのは、あくまでも他の語との関係性、すなわち文脈の中でしか可能にならない。逆に言えば、文脈さえわかっていれば、未知の言葉、つまり無意味な言葉であっても、なんとなく意味が見えてくる場合もある。

 本書がbk1の書評者がどのようにレビューしているのかとクリックしたら、こんなページがありました。書評フェア・日本のポストモダン思想です。おなじみさんが勢揃いしている。本書も取り上げられていますね。
 それはさておき、今週のbk1書評で僕の山崎養世著『米中経済同盟』をレビューアップしたのですが、書評担当者のが、「なるほど!書評」コーナーに取り上げてくれました。僕のあまりにナイーヴすぎるんじゃあないかというベタな記事を引用している。
 《「地球という限定された環境で、一方で技術革新を進行させながら、環境を上手に家計して、みんなが豊かな気分になるように政をやってゆかなければ、日本だけではなく、あらゆる国が立ちゆかなくなる」その通り!》
 ただ、僕としては複雑な気持ちで、「あらゆる国が立ちゆかなくなる」方向指示器が霧の中で点滅しているのが見える気分なのです。あらゆる国とそこまで風呂敷を拡げなくとも、この国の円安基調は間違いないと思うし、まず、この国が立ちゆかなくなるであろうと、危惧するのです。危惧と言っても、僕の存命中は多分大丈夫で、内田さんにしても見事に逃げおおせることができるであろうし、安倍さんだって、だから年寄り連中を当てにしないで、若い人たちが、それぞれの穴ぼこに入り込んで、より深い穴掘りを一時中断してでも、「あらゆる国が立ちゆくwin&win」の制度設計を国境を越えてやんないとヤバイのではないかと老婆心ながら思っているのです。
 ♪そうそう、JCcastが更新アップされましたね、♪JC-Nex!も…、