作家たちの自助出版?

kuriyamakouji2008-01-05

 保坂和志の,掲示板保板によると、明日の朝日新聞 1月6日(日)の読書欄の「たいせつな本」というコラムのところで、小島信夫『寓話』を取り上げたとのことです。でも、ここの予告によると、福武書店から出た『寓話』のことしか出ていませんが、保坂さんのコラムでは、個人出版のことを書き、個人出版『寓話』のほうの写真が載るそうです。
僕はかって、こんな記事をアップしていました。

保坂和志さんが、ネット上でアップしている例えば現在「新潮」連載中のエッセイ『小説をめぐって』の記事が保坂さんの自助というかテキスト入力を(というのは版元にテキストデータを送信してもらうことは出来ず、自前で有料ボランティアが入力打ち込みを行っている)した上で、保坂和志HPにアップしているわけです。(ちなみに現在の最新更新は2007年3月号の「新潮」)保板でこのテキスト入力のボランティア募集をしたとき、僕も思わず手を挙げようとしたのですが、保坂さんはこの連載はひょっとして30年くらい続くこともあるとのことで、とてもじゃあないけれど、僕のいのちの方が絶えてしまうので、遠慮しましたが、着々と進行中ですね、
 単行本としては『小説の自由』『小説の誕生』という結実をみたわけですが、これからも単行本が刊行されるでしょう。雑誌『新潮』、ネットのテキストで読むことは出来るわけですが、やはり単行本として僕は買ってしまう。僕の知る限り殆どの人はそうするみたいですね。
 保坂さんのこの試みに関して言えば版元に対する「販促貢献」していることに結果としてなっていることは間違いない。こういう信頼関係と、実績があるから、小島信夫『寓話』のプロジェクトを立ち上げて、完売、そして増刷までたどり着けたのでしょう。当初、この復刊に関してネットでテキストを有料公開して安価で読者に提供という案もありましたが(こういうやりとりが、ネットの保板でなされたのです、そしてとうとう、そのためのオフ会もやってしまった。鎌倉に結集っていうわけです。)、
 保坂さんの強い意志で、むしろちゃんとした装幀で発刊したいということになり、画像のような素晴らしい『寓話』が発刊されることになったのです。
 最近、保坂さんが増刷の広報をしていますね。それを勝手に貼り付けます。

 そして、こんなネット上でのチラシが立ったわけです。

プロジェクトKによる小島信夫『寓話』増刷しました。
昨年3月に出版したときには部数が限られていたので、営業活動はしませんでしたが、今回は書店にも置くことにします。(ただし、管理が複雑になるので買い取り限定――殿様商売ですいません)
書店の方、または書店と知り合いの方、info@k-hosaka.comまでご連絡ください。
納品は3冊以上、買い取りの原価は65%つまり1冊2600円。
送料は書店持ち(着払い)
個人の販売はいままでどおり、本体4000円プラス送料340円。

『寓話』の増刷分が順調に捌けたら、『菅野満子の手紙』を第2弾として出版しようと思います。

 この記事は2006年6月19日なので条件が変わっているかもしれません。直接、メールで確かめればいいでしょう。

 作家としては申すまでもなく、こういう実務に関しても保坂さんに脱帽です。直販方式の弱点を押さえた出版流通システムですね、再版維持制度撤廃は、なかなか難しい状況がこれからも続くと思いますが、現金買取に関して業界がもっと積極的にやってもいいかなぁと思う。
 かって書店にいた時、手に入らないベストセラーものを現金買取しようと思ってもできないわけです。それで、最後の手段として図書券でライバル書店に行って正価でレジ購入するのです。逆に5000円の一年に一度も回転しない常備委託商品を再版維持制度を守って、500円で現金買取する。荒利が九割ですが、売れたらの話ですからね、
 棚に並べて、どうしようもなくなったら、古本屋さんに買ってもらえばいい、そうすれば、出版流通の流れが淀むことなく巡回すると思うのです。

 ちょいと、業界関係者の神経を逆撫でることを書いていますが、例えば、3000部で、充分ペイ出来てよく売れたと五つ星の評価をするビジネスモデルが出版業界では常識であって欲しいと思う。だから、かような書評誌、紙面で、そんな本を意識して取り上げて欲しいと思います。極端に言えば、○万部以上売れたら、もう、「読みたくない」と思ってしまうへそ曲がりの読書人を大切にするということです。単行本で、3000部の完売って、教科書採用でなければ、又は、組織買いでなければ、スゴイ数字です。
 まあ、本によっては、売り方が変わるでしょうが、一人一人の読者に一冊の本が身銭を切って流通して行くことの凄さをもっと感じてもいいかもしれない。
 別の文脈で、自助努力なんて、よく言われていますが、それぞれが、自助することは自主が核になることで、なんでも、かんでも組織に寄りかかる構造を揺らがす意味でも大事なことだと思う。保坂さんのKプロジェクトのような試みが増えればいいと思う。
 保坂さん自身も年頭の挨拶で今年は久しぶりに「小説」を書くとの決意を語っていました。楽しみです。
 参照:★
文は武より強し/(自分自身を見殺しにする国) - 希望は、戦争?blog 〜「丸山眞男」をひっぱたきたい Returns〜

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