書くよりまず「読む快楽」

 日本経済新聞の「文化欄」(2月2日)の古本マツノ書店を経営する傍ら復刻出版する松村久さんの記事が面白かった。
 作家の保坂さんが、保坂和志掲示板で仲間を集めて小島信夫の復刻版『寓話』をプロジェクトして今も販売告知していますが、松村さんの「出版五原則」は他の分野でも応用がきくのではないかと思いました。
 「山口県の歴史、民俗に関する内容で、ユニークかつ学術的価値の高い本」に焦点を絞ったものですが、『寓話』のような埋もれた既存の作家の本を復刻する試みを例えば、今は自費出版ブームで、色々問題ありきの共同出版社も登場したわけですが、200万円を前払いして「自分史のような本」を出版するよりは、自分が昔読んだ愛読書を復刻するようなゲリラ出版があってもいいのではないかと、そんな妄想が浮かんだのです。
 意外といいアイディアだと思う。でも、やっぱし、復刻版なら自己実現投資にならないから、難しいのかなぁ。大雑把に言えば、「読む人」より「書く人」の人口が増えているのは異常ですよ。某文芸雑誌の売れ部数が減っているのに、その雑誌の新人賞応募投稿の原稿件数がどんどん増えているのはおかしい。「書く」ことより先に「読む」ことがあると思うのに、わからないなぁ。せめて、お金の余裕があるのなら、復刻版を自費出版して欲しいですね。
 それか、著作権の切れた古典の著作から抜粋したアンソロジー編纂することによる「自己表現」でもいいと思う。でも書いている人は自分が「世界の中のたった一つの花」だという自信と強い思い込みがあるからね。
 「出版五原則」
 (1)部数は三百部程度まで(2)定価は三千円以上(3)完全原稿であること(4)決して急ぐな(5)年間六点以内
 それか、新しい出版企画でも版元が提示して、精々初版千部以下でメジャーが取り扱わないものを一口いくらかで投資を募って出版する。そんなインディーズな企画が音楽・映画だけではなく、出版でも活発になされたらいいとは思う。雑誌ではあるけれど、単行本で、こんな内容でと、ネットで一部公開して資金を募る。勿論、予想外に売れたら投資した人に還元する。
 多分、もうそんな似たようなビジネスモデルがあると思いますが(僕が思いついたことだから)、あったら教えて下さい。勿論、そそるコンテンツが大事ですが、ケイタイ小説、ライトノベルが全くわからないオヤジはやはり、復刻版企画が穏当なところでしょうか。