希望は、山桜&花連帯

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 更新を暫く休むつもりでしたが、下の「んんん王子」の童話習作の前に「花に埋もれた町」なんて言うのを書いていて、そのコンテンツもアップした方が流れがわかると思い、僕のアタマの整理にもなり公開します。

 海がみえる、丘のうえに、おおきな、おおきな、山桜の木が、はえておりました。 
 朝まだ、くらいうちから七まがりの坂道をかけのぼってゆく手押し車が、カタカタと音をさせながら、だんだんと近づいてまいりました。その後ろから追いかけるように、水平線のかなたから、お日さまが少し顔をのぞかせはじめました。
 段々畑には、タンポポが花をつけて、千の黄色いじゅうたんをしいておりました。
 だいだい色の光の輪を背に浴びた車は、海と空の間を飛んでいるようであった。
 カタカタ、ドッキン、ドッキン、
 やがて、車は山桜のねもとにやってまいりました。
 ひょいと、ちっちゃい女の子が車のかげから顔をのぞかしました。この子が車を押していたのですね。とても力もち。
 お日さまが、まんまるくかがやいて女の子の顔をきらきらときれいに洗ってくれました。そして、車は色々な花々で飾られていました。日本の花だけではなく、外国の知らない花もありました。
 女の子は花売り娘なのでしょうか。坂道を下って町へ出ればお客さんがいるでしょうが、ここには、誰もいません。ただ、一本の山桜だけです。
 実は、世界の国の色々なところから、女の子が押してきた花車に乗って、色んな花が千年も生きた山桜にお別れをするために集まってきたのです。
 すいせん、ばら、コスモス、ラン、ボタン、ツバキ、きく、あやめ、うめ、ベチュニア、ゆり、ローリエ、ハーブ、サフラン、ハイビスカス、キキョウ、スズラン、フリージア、カトレア、プラタナス、ばしょう、イエライシャン、エーデルワイス、リンドウ、ジャスミン、ハス、ブーゲンビレア、…、まだまだ、いっぱいあります。
 ここに沢山のお家がたつのです。それで、今日、千年も生きた山桜を切りたおすことになったのです。
 「お〜い、お〜い…」この町の男たちの声が聞えてきました。電動ノコギリを手にした人もいます。
 女の子は山桜に向かって叫びました。
 耳に聞きとれない高い音なのか、男たちの耳の中がキーンとして、あまりの痛さに思わず目を閉じてうずくまりました。
 男たちが立ち上がったとき、目を疑い、声も出ませんでした。男たちの足もとをかけていた犬たちが、狂ったように吠えました。女の子が飛びはねました。桜吹雪が竜巻となって、女の子を天空かなたにつれてゆきました。つばさがはえて、いつのまにか、鳥になっていたのです。
 名も知らぬ、名も知った無数の花々が、山桜のまわりをいくえにも踊りくるっていました。桜吹雪は、いつまでも、降りやまりませんでした。
 やがて町は花に埋もれて消えていったのです。

 多分、三作目は更新再開のときアップいたします。では、又……、
 敷島のやまと心を人問はば朝日ににほふ山ざくら花 (本居宣長