したたかなフリーライター

牧野智晃写真集『TOKYO SOAP OPERA』

牧野智晃写真集『TOKYO SOAP OPERA』

「とにかく読者にはいろんな人がいるので、抗議があったら困りますから」、抗議は勲章ではないの、抗議を怖れて紙面作りをやってもらったら、読者が困ってしまう。非常に基本的なことだと思うのですが、大新聞社の場合は違うのかなぁ。しかし、『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃ ならないんだ』の都築響一を尊敬してしまうねぇ。

朝日新聞日曜日の読書面で連載していた書評を、突然辞めることになった。
1999年に春に始めたから、もうすぐ6年目という長い仕事だった。
最後に書評するはずだった本が『トーキョー・ソープオペラ』。
牧野智晃という1980年生まれの若い写真家が発表した、初めての写真集だ。
「東京に住む熟女116人の“昼メロ”をテーマにした、
お笑いだけど力作でもあるこの本に向けた書評が、
ようするに朝日新聞の“良識”に触れて突然の連載終了という事態に至ったわけだが、
さてここで問題:以下にあげる文章が書評の原稿でしたが、
これのどこが新聞として不穏当な表現だったのでしょう。
問題となった単語と、その理由を簡潔に述べて下さい。(p268)

として、「トーキョー・ソープオペラ」の一文が掲載されているのです。初出は週刊文春「2005年12月15日号」なのですが、朝日新聞からは何の反論もなかったのですかねぇ。
著者のこの一文には泣ける。

 朝日新聞の読書面ともなれば、すごい数の読者がいるわけだし、小出版社の良質な本を紹介してあげられたら、いい宣伝になるだろうし、それがまた新しい、いい本を出す原動力になるだろう。そう思って、なるべく小さな出版社の、世に知られにくい本を紹介してきたつもりだった。
 よく誤解されるが、書評に選ぶ本は新聞社が送ってくるのではなくて、全部こちらが本屋さんを回って見つけ、自費で買って、資料も自分で集めて原稿を書くのである。たった数百字の原稿を。だからたいへんだけど、楽しくもある。そんな6年間を終わらせることになった担当者の最後のひと言、それは「(そんなことに)そこまで賭けますか……」だった。そうだよ、そこまで賭けるから、50歳になってもフリー・ライターなんて、割に合わない仕事をやってられるんだよ。でも、わかんないだろうな、大新聞のエリート記者には。(p272)

あまりにも格好良すぎる。ハードボイルドの名探偵フイリップ・マーロウを彷彿しますw。
To say Good bye is to die a little.