僕は旅する図書館長

百年の愚行 ONE HUNDRED YEARS OF IDIOCY [オリジナル複写版]

百年の愚行 ONE HUNDRED YEARS OF IDIOCY [オリジナル複写版]

 標題の図書館長は土居一洋氏で、昨日(5/21)の日経新聞文化欄に土居さんの記事が掲載されていました。本が入った木製の130キロ近い「水車型本棚」を自転車で引っぱって、もう三年も旅を続けているのだそうです。北海道から南下して今ようやく関西にやってきたところで、沖縄で折り返して四国を回り、出発点の愛知に戻るのにはまだ二年はかかるだろうということです。
 一体この若者はどんな人なんだろうねぇ。詳しいことは日経に彼自身が書いた「僕の履歴書のような」一文を読んでもらいたいです。ちなみに隣に民俗学者谷川健一氏の「私の履歴書」が掲載されています。こちらの谷川さんの連載も楽しみなのですが、今回の土居さんの記事には呆気にとられました。
 土居さんは、専門学校を中退してから、色んな仕事を経験して起業をするためにお金をためていたのですが、偶然、書店で見かけた『百年の愚行』の一冊が彼を変えたというわけです。
  『百年の愚行』と言えば、僕がこのブログを始めた最初(2004/7/14)に書評した本で懐かしいです。もう四年前ですか。
 でも、それからの彼は信じられない行動を始める。近所の図書館にこの本をリクエストして蔵書に加えてもらうのは、僕でもやりました。それからです。2005年1月、彼は自転車に乗って全国の図書館に足を運び同じように頼んでみようと出発するわけです。だが、地域住民でない人間がいきなり訪ねても営業に来たのかと思われてしまう。そりゃあそうでしょう。
 そこで、干物を売っていたおばあちゃんが「自分でやっていることを見た目でアピールしたらどうだい」ってアドバイスされる。スゴイおばあちゃんですねぇ。
 それから自転車で引っぱられるベビーカーを安く手に入れ、これに十種類ほどの本を積んでチャリンコ行脚が始まったわけです。
 狙いは当たって声をかけてくれる人に環境本を貸す。返してもらう必要はない、借りた人が誰かに「又貸し」してくれればいいわけです。そして本の見返しに葉っぱの絵を書き添えて、「読み終えたら、あなたも一枚葉っぱを描いて、次の人に渡して下さい」と葉っぱバンドですかねぇ。これ又僕の最初のハンドルネームが「葉っぱ」だったので、その徹底したナイーブさに赤面してしまう。 

 本を仕入れるお金が尽きると、その土地で仕事をした。工事現場、居酒屋、農業、体を使う仕事なら何でもやる。テント暮らしだし、自炊するので生活費はほとんどかからない。いい温泉があれば風呂にありつく。

 ここまで、ベタになることが、何かを動かす駆動力になることは間違いない。だが、仙台に来て脇見運転していた自動車にぶっつけられる。そして実家の徳島に戻ったのですが、再チャレンジで、仙台に戻る。そこで、「水車型本棚」を引っぱった「じてんしゃ図書館」が誕生したというわけです。
 今、旅の途上で、これまでに貸し出した本は千冊を超えたという。まさに「千夜千冊」ですねぇ。描いた「葉っぱ」も千を超えている。土居さんはケイタイを持たないと言う。色んな若者がいますねぇ。
 やり遂げて下さい。そう言えばで自転車にのってアフリカを縦断した『マンゴーと丸坊主』を書いた大阪の女の子がいましたねぇ。
 『百年の愚行』のエピソードがもう一つありました。僕のブログを読んでくれたある若者がその切っ掛けの一つが『百年の愚行』をブログに最初に取り上げたことだと言ったのですが、何故、「赤木智弘」を応援するのかって怒られて彼はこのブログから去って行きましたが、同じ若者であっても、土居さんと赤木さんでは、何がどう違うのか、そのことについて考えたいと思う。まあ、若者というカテゴリーで論ずべき問題ではないとは思う。