井上ひさし著『東京セブンローズ』

東京セブンローズ

東京セブンローズ

図書館のリサイクル棚から頂戴した井上ひさしの単行本『東京セブンローズ』がめっちゃくちゃオモロイ。
この作品は『別冊文藝春秋』159号(1982年4月)から219号(1997年4月)まで中断をふくめて連載され、そのご大幅に加筆訂正されたものです。とあるけれど、同じリサイクル棚には司馬遼太郎の単行本『街道を行く』がずらりと並んでいた。司馬遼太郎井上ひさしも元気だった頃は、雑誌も活況を呈していたんだと改めて思う。
21世紀に入って、松本清張をはじめ、かようなベストセラー作家がいなくなりました。あ、そうか、瀬戸内寂聴が「パープル」で『あしたの虹』をひっさげてケータイ小説分野に乗り出しましたねぇ。パープルなケータイ。出版界も大変だぁ。
意外と頑張っているのが、自費・共同出版文芸社。手堅い「自己表現ビジネス」だけではなく、血液型で矢継ぎ早にヒット商品を出している。この国の人々は二世、三世というか、「血のつながり」というか、血が騒ぐのでしょうか、血統、血液型って、相変わらず大好きですねぇ。「家」とか「血」とかが内面化されて、天皇制をはじめ様々な文化を支えているんだと改めて思う。いつまでも血液型本は売れますねぇ。
世襲政治家も花盛りです。
本書の帯文にこんなことを書いていた。

日本語を救った女たちの物語!
国破れて国語あり。しかし、そこに未曾有の危機ー日本語のローマ字化!
執筆じつに17年。その歳月と情熱のすべてをかたむけた井上文学の最高傑作ついに成る!
▼戦局いよいよ見通しのない昭和20年春のこと、東京根津に団扇屋を営む一市民が、日記を綴りはじめる。その驚倒・賛嘆すべき戦火の日常の細密な叙述には、一片の嘘もなく、まじりっけなしの真実のみ。▼耐乏に耐乏かさねつつ、人々は明るく闊達そのもの。この奇妙な時空は、悲惨ながら郷愁をさそわずにおかない。▼そして敗戦、日記はつづく。占領軍は、忌むべき過去を断つべく日本語のローマ字化をはかる……。▼国家、市民、そして国語とは何なのか?待つこと久し、笑いと勇気、奇想と真率。記念碑的名著ついに完成!

奥付を見ると平成11年ですねぇ。こんな大時代的な帯文が前世紀には書かれていたんだと驚きます。今は書店員のPOPがもてはやされているがこんな大仰な言葉を使わない。でも中身はそんな大時代的なものではなく、アイロニカルでユーモアたっぷり、肩を抜いた文体で、笑いながら読んでいます。
文庫にもなっているんですねぇ。上巻と下巻にわかれている。
ブログでかような日記が散見するようになれば、ブログ文化を新しい文化の誕生として、ヨイショをしたいけれど、なかなかそうは行かない。
動画で「井上ひさし」さんでクリックすると憲法問題で頑張っている。軍人密度かぁ。
http://www.youtube.com/watch?v=-0LbBSOEFGY
でも、面白い小説を読みたい、もっと、もっと、書いて欲しいと思いました。