福岡伸一/できそこないの男たち
- 作者: 福岡伸一
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/10/20
- メディア: 新書
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本書もエロイし、彼の擬人化的手法はエンターティメントとしての物語作家もビックリするつかみでワクワクしながら読んでしまった。
森岡正博の『感じない男』の射精感って「おしっこ」をするようなものだと言うのがあったが、福岡さんは最後のくだりで、希望に満ちたことを書いていました(笑)。
時間の存在を、時間の流れを知るたったひとつの行為がある。時間を追い越せばよい。巡航する時間の一瞬でも、追い越すことができれば、その瞬間、私たちは時間の存在を知ることができる。それが加速覚に他ならない。
巡航する時間を追い越すための速度の増加、それが加速度である。加速されたとき初めて私たちは時間の存在を感じる。そしてそれは最上の快感なのだ。なぜならそれが最も直截的な生の実感に他ならないから。
自然は、加速を感じる知覚、加速覚を生物に与えた。進化とは、言葉のほんとうの意味において、生存の連鎖ということである。生殖行為と快感が結びついたのは進化の必然である。そして、きわめてありていにいえば、できそこないの生き物である男たちの唯一の生の報償として、射精感が加速覚と結合することが選ばれたのである。(p283)
森岡さんの『感じない男』には何とか、「放尿感」が細々とありましたが、内分泌療法を継続中のオレにとって、「射精感」は忘却の彼方、「放尿感」の勢いもないです。
本書で「両刃の剣」(p203)で主要な男性ホルモンであるテストステロンについて書いてあった。
つまり、男性はその生涯のほとんどにわたってその全身を高濃度のテストステロンにさらされ続けることになる。これが男を男たらしめる源である。とはいえ、同時にテストステロンは免疫系を傷つけ続けている可能性があるのだ。
なんという両刃の剣の上を、男は歩かされているのだろうか。
女より男の方が癌化のリスクが高いということです。生の基本仕様は女なのです。アダムがイブをつくったのではない。イブがアダムをつくったのです。
シモーヌ・ボーヴォワールの「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」は生物学的にはこう言いかえなければならない。人は男に生まれるのではない、男になるのだと福岡先生はおっしゃる。