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フリーター労組の生存ハンドブック―つながる、変える、世界をつくる論争 若者論 (文春新書)

【「働く現場」でサバイバルする実践の書/栗山光司(2009/09/09 10:59:17)】
学者や評論家の書いたものではなく、あくまでアクティビスト達の手になる実践の書です。運動を通して獲得したノウハウを分かりやすく章立ても工夫しながら、丁寧に編集しています。
第一章:「働く」、第二章:「生きのびる」、第三章:「仲間とつながる」、第四章:「ステップアップ」と構成されているのです。最終章で言及しているように国境を越えて海外の人々とも手を結んだ運動まで広がっていかなければ、我々の求める「自由」と「生存」は、他国の人々を搾取・排除によって成り立つアブノーマルなものになるであろうというまっとうな見取りもあります。
勿論、このあたりのことについては編者、執筆者は繊細な感受性を持っており、だからこそ、元ひきこもりだったり、ニートだったり、常に「生きづらさ」を抱え込んで何とか社会と折り合いを付けようと悪戦苦闘してきた履歴があるわけで、この『生存ハンドブック』はまず当事者たる彼らにとって必要な書だったわけです。
そういう意味で彼らの「運動・戦い」を本書に記述することによって再確認し、次なるステージへと飛ぶための「溜め」本とも言えます。
「つながる、変える、世界をつくる」をモットーにフリーター労組清水直子と園良太が編著者となって編んだもので、執筆者は11人、イラスト・装幀は「いのうえしんぢ」です。
ただ、本書は必要とされている人に届くのかと心配してしまう。清水直子もその懸念があるから、
「はじめに」で「この本を必要としているのに、買うことができない方、申し訳ない。いますぐ必要なページに目を通して、あとで余裕ができたときに買うか、図書館でリクエストしてほしい」とことわりを入れている。
都心はともかく、地方の街の本屋で本書が棚に陳列されているか、現在の出版流通システムの中では「ちょっとだけ、立ち読み」も難しいでしょう。
1章、2章に関しては解雇、残業代の割増、社会保険生活保護などについての知識・情報をわかりやすく盛り込んでいるから、このページだけでも目を通すと「労働・生活の不安定」、「精神的な不安定」のもやもやが少しでも晴れるヒントが得られると思います。
僕は本書を地元の図書館にリクエストしましたが、すぐに資料として取り寄せてくれました。かような本は図書館にリクエストすると取り寄せの可能性はとても高い。
現役を引退した年寄りにとって必要でない本でもそのようにリクエストしてささやかな手助けは出来る。
勿論、bk1から購入して地元の図書館に寄贈する方法もあるけれどねぇ。
ともかく、「必要な人に必要な情報が与えられて本書は『生きる』」、「生存ハンドブック」はそのような意味でも「本そのものの生存」も賭けられている、アクティブな「実践の書」なのです。
http://www.bk1.jp/review/0000477943