小田光雄の「検証・近代出版流通システムの臨界点」(2000年8月5日)

ニッポンの思想/書棚と平台 - 葉っぱのBlog「終わりある日常」
こちらの出版流通に関するエントリーの続きになるのですが、
スクラップを整理していたら、2000年8月5日付け「図書新聞2496号」に掲載された小田光雄の記録 小田光雄氏が語る「検証・近代出版流通システムの臨界点」という一面から三面に渡る「ヘルメースの会・第四回講演会」で採録された長文の論考がスクラップ帳に張り付けていました。再読すると、柴野京子の『本棚と平台』に呼応する重要な指摘が平易な語り口で語られていますね。『本棚と平台』の巻末文献一覧には、このテキストが取り上げられていないので、僕の勝手と僕なりの脳内整理に追々引用しておこうと思います。
興味のある方は図書館、大宅壮一文庫あたりでチェックして下さい。
問題は(1)ハードの流通システムは世界に冠たるものですが、(2)の金融システムを含んだソフト面が全面再販・委託にオンブにダッコのどんぶり勘定でやってきたのに、21世紀に入って益々(1)と(2)のハードとソフトの軋み度が高くなったということでしょう。
小田さんが重心を置いて警鐘をならしているのは、(2)のソフトの部分であるだろうし、それによって出版流通全体の良き流れを作ろうと出版社主という当事者のポジションから発信しているのだと思う。そこのところを最大限リスペクトしたい。柴野さんの新刊は「書物を媒介としたコミュニティ」を支える現代の出版流通をのどように構想されうるかという命題に背中を押されてこの力作を発表したわけですが、それ以前に(2)の徹底した検証作業が必要ではないかと思ったのでした。勿論、柴野さんの志高い命題は大事ですが、福嶋さんの書くように問題をややこしくする面がなきにしもあらずだと思いました。
出版社と書店はいかにして消えていくか―近代出版流通システムの終焉出版状況クロニクル出版業界の危機と社会構造
文庫、新書の海を泳ぐ―ペーパーバック・クロール
書店の近代―本が輝いていた時代 (平凡社新書)本の現場―本はどう生まれ、だれに読まれているかわたしの戦後出版史
参照:拙レビュー:
http://www.bk1.jp/review/0000165265
http://www.bk1.jp/review/00004775621
http://www.bk1.jp/review/0000468574
http://www.bk1.jp/review/0000221424
http://www.bk1.jp/review/0000281226
http://www.bk1.jp/review/0000441616
http://www.bk1.jp/review/0000165265