矢部史郎/原子力都市


地元の図書館にリクエストしていた矢部史郎の『原子力都市』が入荷してさっそく読み始める。
ページをめくると、なぬ!「呉」という文字が飛び込む。

 呉のキャバクラで飲んでいたところ、若い男性客の二人連れが、カラオケで「どんぐりころころ」を歌いだした。「どんぐりころころどんぐりこ」である。冒頭からキャバのネタで申し訳ないのだが、あまりにも衝撃的な経験だったので、ここに書きとめておく。いったいなんだろうこいつらは。と思っていたら、彼らは「大きな栗の木の下で」を歌い出し、つづいて畳み掛けるように「アンパンマン」の主題歌を歌いだした。「何が君のしあわせ、何をしてよろこぶ、わからないままおわる、そんなのはいーやだ」である。あまりの幼稚さに、キャバ嬢たちの表情が凍る。店内の温度が急激に下がっていくのがわかる。なるほどこれが自衛隊か。(P31~2)

僕は1960年の夏、呉を離れて50年、一度も呉を訪れていないけれど、故郷となると、やっぱし大阪ではなく、「呉」と言いたい気分がある。だから、冒頭の矢部さんの呉訪問記には目が点になったのですが、まったく、キャバクラに縁がないけれど、何故、こんなオモロイ歌で引いてしまうのか、わかりまへん。僕が現場にいたら、哄笑して盛り上がったかもしれない。
だって、確か「どんぐりころころ」は僕がリスペクトする某社会学者の持ち歌だったという記憶があるし、「大きな栗の木の下」は僕の持ち歌にしようかと思ったこともある。「アンパンマン」は友人の息子のニックネームだし、まあ、そんな<極私的>な偏向ですが。
どうやら、それがダメなんだという文脈で論考されていますねぇ。
吉田満の『戦艦大和の最期』もトンデモ本として分類されている。
僕の愛読書の一冊でもある。読み始め早々から噛み合わないみたいだなぁ。仕方がありません。
原子力都市
戦艦大和ノ最期 (講談社文芸文庫)