全例調査をやっていれば

イレッサ訴訟の記事を色々読むとせめて市販後調査の手法の一つ「全例調査」をやっていればかような訴訟沙汰にならなかったとつくづく思う。
読売新聞の医療情報部高梨ゆき子氏が署名記事を書いている。(2/26)

イレッサは2002年7月の承認後まもなく、間質性肺炎による死亡例など重い副作用症例が相次いで報告された。抗がん剤治療の専門医で、国立がん研究センター中央病院の勝俣範之医師は「イレッサの問題は、不適切な過剰使用にも原因がある。抗がん剤治療には危険が伴うので、副作用を熟知した専門医による処方が必要だ」と話す。
同年12月に厚生労働省が公表した主な副作用症例(46例)を、勝俣医師が分析したところ、体調不良の患者への投与や、他の抗がん剤との併用など標準治療を逸脱した例が目立ち、「7割以上が専門でない医師による不適切投与と思われる」という。

点滴ではなく飲み薬というのもあるかもしれない。点滴なら入院して行う病院もあるし、通院でも一日仕事ですよ。飲み薬となると敷居が低い。それが「夢の新薬」として普及した一因でもあると思う。

ただ、欧米と違い、日本には腫瘍専門医が抗がん剤を使うという土壌がなかった。日本臨床腫瘍学会は当時できたばかりで、学会の専門医制度で最初の認定が行われたのは05年のことだ。がん細胞を狙い撃つ分子標的薬として注目されたイレッサは「副作用が少ない」との評判が高まっていた。飲み薬でもあり、「歯科医も処方した」といわれるほど、安易な処方が拡大しやすい状況だった。
「だからこそ企業や行政が、全例調査など一定の対策をとるべきだった。と指摘するのは、埼玉医大腫瘍内科の佐々木康綱教授だ。
全例調査は、全患者の使用成績を集める市販後調査の手法の一つ。抗がん剤など重篤な副作用が懸念される薬では、医師や患者を製薬会社が事前登録するのが一般的で、不適切な使用や拡大を防ぎ、安全監視の強化になる。企業が自主的に行う場合もあるが、国が承認条件で義務づけることもできる。

抗がん剤に「夢」を託すべきナイーブさは問題かもしれないが、そんなナイーブさが免疫力をアップさせることもある。