福島原発低レベル放射線曝露によるがん発症者数予測

放射能の影響は高レベル曝露による急性障害だけでなく、低レベルであっても内部被爆により10年、20年後に発症するかもしれない晩発性障害の症候の怖れが予測出来るわけで、でも、僕は再燃がんの患者として、そこまで延命出来ないとは思うし、後期高齢者の年寄にとってももうひとつピンとこないリスクですが、次世代の子供たちにとっては大事な予測数値です。

福島原発低レベル放射線曝露によるがん発症者数予測
 欧州放射線リスク委員会(ECRR)の科学委員長クリス・バスビー教授は、日本の放射性降下物汚染地域で予測されるがん発症の計算を発表しました。彼は、IAEA及び日本の公式ウェブサイトのデータを使用して、がん発症数を推定するために、ふたつの方法を用いました。そして、これらの結果を国際放射線防護委員会(ICRP)のモデルによる結果と比較しました(注4)。
▼トンデル・モデル
 ひとつは、スウェーデン北部でマーチン・トンデル博士により実施された研究に基づくトンデル・モデルです。この研究はチェルノブイリ後10年間のがん発症率を検証したもので、土壌汚染のレベルの変動で差異が生じ、地表1平方メートル当りの放射性降下物の放射能量100キロベクレル(kBq)(注6:単位)毎に、がんが11%増加するという発見に基づくものです。
 バスビー教授は、この係数を福島第一原発から100kmの範囲の地域に適用しました。この地域についてIAEAは、1平方メートル当り平均 600kBqの放射能を報告していました。したがって、この100km地域の人口330万人の中で、今後10年間で事故前よりも66%のがん発症増加が予測されるとしています。これは2012年から2021年の間に福島原発による曝露で103,329の余分ながんが発症することを意味します。
 福島原発から200kmと100kmの間のドーナツ地帯の人口780万人に、100km以内より低い放射能量で"トンデル"モデルを適用すると、2021年までに120,894の余分ながんが発症することになります。
 住民がそこに住み続け避難しないと仮定するなら、"トンデル"モデルによるがん発症件数の合計は10年間で 224,223 となります。
ECRRモデル
 第二の方法は、生体で様々な放射性核種が様々な挙動をするということに基づき、ECRRが勧告する重み係数から引き出すものです。このモデルでは、100km圏内で191,986、100〜200kmのドーナツ部で224,623の余分ながん発症が予測されます。これらの半分が最初の10年間で発症し、残りは10〜50年の間に発症すると仮定します。
 住民がそこに住み続けると仮定するなら、この第2のモデルによるがん発症件数の合計は416,619であり(編注:合計すると416,619ではなく、416,609となる)、そのうち 208,310 が最初の10年間で発症することになります。したがって、トンデル・モデルとECRRモデルは概略一致していると言うことができます。
ICRPモデル ICRPモデルは、50年間で余分ながん発症は 6,158 としています。一方、半世紀の間にがんの発症は通常250万が予測されるといわれており、それに比べてICRPモデルによる発症数は非常に少ないことになります。
以上がクリス・バスビー 教授の試算です。

ピコ通信/第152号より