松浦寿輝/不可能

久しぶりに小説らしい小説を楽しく読むことができました。

三島は一九七〇年十一月、市ケ谷駐屯地で自衛隊決起を促して果たせず、総監室で割腹自殺を遂げた。その三島が、もしも自殺に失敗して刑に服し、二十七年後に出獄したとすれば、何を思い、何を考えるだろう。小説はこの謎に答えるかたちで進行してゆく。すなわち年老いた三島そのものが巨大な問いかけなのだ。
 著者はこの謎に答えるに、秘(ひそ)かに吉田健一をもってしている。年老いた三島は吉田になるというのだ。この図式が傑作の理由のひとつ。
http://mainichi.jp/enta/book/news/20110710ddm015070002000c.htmlより

怪奇な話 (中公文庫 A 50-6)

怪奇な話 (中公文庫 A 50-6)


「短編連作」仕立てになっているが中編ミステリー・怪奇小説としておおいに楽しめる。平岡は手品を操る人でもあるのです。「地下室」と「塔」の大掛かりな二つの建物に設えた舞台装置で「不可能」な事件が起こる。