ステロイド系剤

MBA療法に加えて補助薬としてステロイド系の「デカドロン」を一日朝、晩、一錠ずつ服用しているのですが、大野更紗の「困ってるひと」を読むとステロイドの毀誉褒貶に改めて驚きます。暴走と紙一重のところがある。大野さんが服用して「おしり大虐殺事件」が勃発したのは「プレドニン」がトリガーとなる。

 これほど大量の液体が体内から流出しつづけて、生きていられるのが不思議なくらいだった。流出元がおしりだから大丈夫なのだろうか。おしりとは、いかなるレゾン・デートル(存在理由)でもって人体に装備されているのだろうか。おしりは予備のクッションに過ぎないのだろうか。この不可思議なおしりに対する哲学的問いは尽きないが、とにもかくにも、まずはこの大流失に対応せねばならない。このままでは、洞窟内の様子すらうかがい知ることができない。
 齢二十五にしておむつのお世話になるのはもちろん微妙な心情だが、そのようなかわいげのある女子的悩みを抱える余裕はなかった。まず、即物的問題が浮上する。洞窟探検隊の標準装備品として、大量の「減菌ガーゼ」と「リハビリパンツ」が必要になったのである。感染症対策の抗生物質、気休めにもならない役立たずの痛み止めを投与されながら、まず第一にブツの問題で頭を悩ます羽目になるとは、まったくこの世は物質的だ。
 わたしは、おむつ等の消耗品は患者自身が用意しなければならないことを、この時はじめて知った。なにせ世知辛い話、破裂して最初の数日間にオアシスで使用したリハビリパンツLサイズ十枚。
 「あとから返して下さいね」
 と何度も看護師さんに念押しされたのである。
 「ガーゼ、もうちょっと使う量を減らせませんか」
 と何度も看護師さんに尋ねられたのである。(p200)

 僕も失禁パンツを毎日取り換えている。馬鹿にならない、あの大王製紙のギャンブラーにゼゼが還流しているのだろうか?ああ、この倒錯は何とも言い難い。
自己免疫性肝炎〜「困ってるひと」 - 感想