松浦理英子/四谷シモン/土井典

澁澤さんが僕の人形を見て、「何でもっとペニスを勃起させないの」と尋ねてきたことがあります。僕としては、ペニスに関しては日常のたらりとした感じがいい、たとえば勃起したペニスはフィニッシュしか連想させず、表現としてはつまらないと思います。−四谷シモンの人形はそんな宙吊りを生きている。ー『人形作家』(講談社現代新書)よりー

 松浦理英子は『優しい去勢のために』の中で、<去勢の旅立ち、新たなタイム・トリップ>で宣言する。

誰が今さらアクメなどに思いを懸けるだろう。わたしたちは欲望の生起と欲望の成就の間を宙吊りのまま滑る。そのためになら、インポテンツにも不感症にでも白痴にでもなってみせよう。ゆえにわたしはあなたの静かな性器が見たい。

人形作家 (講談社現代新書)親指Pの修業時代〈下〉 (河出文庫)優しい去勢のために (ちくま文庫)病院ギャラリー―717days 2001‐2003『土井典人形』