ドットとネットが眩暈するファルスの宇宙

無限の網――草間彌生自伝草間彌生全版画集 All prints of KUSAMA YAYOI 1979-2004クサマトリックス/草間弥生YAYOI KUSAMA Furniture by graf:decorative mode〈no.3〉
◆草間が《無限の網》の絵画に取り組み始めたのは1958年にニューヨークに移り住んでからまもなくであると言う。その「網目の集積」で国際デビューを果たす。自作自演の映画『草間の自己消滅』(1968年)、小説『クリストファー男娼窟』をどちらも観て読んでいませんが、去年、巻き助さんが東京国立美術館での報告をしてくれた『草間弥生展』に行ってきました。京都国立近代美術館で1/6〜2/13迄ですが、午後二時から松本透氏(東京国立近代美術館企画課長)による『永遠の現在ー草間弥生の世界』というテーマで講演がありました。中々面白い話だったのですが、松本氏は今回の展覧会は構想二十年の美術館にとっても、単に評価の下った回顧展のようなコンセプトでパフォーマティブするつもりはなく、陳列も編年方式をやらないで、時間軸を無視した空間を作り出しyayoikusamaワールドを楽しめるものにしたと言ったのですが、そのとおり、色々な仕掛けが施され異空間にタイムトリップした飛行を楽しみました。
◆《水上の蛍》の部屋では宙に浮いた心持でいつまでも無限に繋がる光と戯れていたかったのですが、四人位しか入れないのです。並んで待っている人がいますので、ほんの束の間でした。もっとも圧倒されてある種、ファルス(笑劇)を感じた「銀色のオブジェ」の部屋ではとうとう、笑いがこみあがってきました。銀色の光を放つ群生するファルス(男根)は、まるで千人地蔵が様々な顔を持って、生き苦しさを笑い飛ばす爽快感がありました。でも、解説はぼくのコメントとは全然違う。

「銀色のオブジェ」 1976年に開かれた帰国後最初の大掛かりな個展には、布製の突起物で覆われた家具やオブジェをメタリック・シルバーで着色した大作が何点も含まれていた。銀色の皮膜は群生するファルス(男根)のいのちを凍結させてしまったかのようである。鈍い光を放つとはいえ、色彩を失ったそれらのオブジェは、呼べども応えぬ死の世界の単調さを想わせる。

◆勿論、解説が正解なのでしょう。草間さんもそのような意図なのでしょう。でも、何か僕にとって馴染みの世界、笑い飛ばして、ここから入っていけませんと線が引かれていましたが、飛び越えてモグラ叩きのように小突いてみたかった。草間さんの世界は観る側も閾の高い構えが必要なんではないかと思っていたが、作家の意図がシリアスなものかもしれないが、京都の会場では室内と屋外とを連続させたミラーボールの展示《ナルシスの庭》では幼児が戯れて泳ごうとしていた。《かぼちゃ》も《水玉脅迫》も触りたかったです。水玉のバルーンは階段に設置されていたので、撫ぜ撫ぜ出来ました。巨大なミラーボールがゆっくりと回転する《宇宙の心》、最後の《天国への梯子》で眩暈がして、気持ちが天へ向かって、宙へ昇っていました。とうとう初めから終わりまで、展覧会に行った気分でなくオトナの遊園地で遊んだ酔い心地でした。絶対オススメの展覧会です。家族そろってでも大丈夫。子供も喜びますよ。(小学生以上ならOK!、だって幼児なら玩具のつもりで、タッチを始めるから、ちょいと問題)