角田光代

本書の版元の惹起文句は女の勝ち犬、負け犬とのバトルみたいな販促をしていますが、bk1レビューの“ナカムラマサル”さん“トラキチ”さん、“nory”さん、“みーちゃん”さん達の作品評を読む限り、そんな狭い世界でなく、もっと広く深く、惹起文句、POPをつけるなら<女の友情>でしょう。と僕なりに思ってはいましたが、やっと、本日、読むことが出来ました。酒井順子『負け犬の遠吠え〓』『負け犬〜〓』は去年、読書会のテキストとして採用したのですが、初体験メンバーの読書会ということもあり、レポートはクリックしてご覧の通り、データ量だけは多い散漫なものでしたが、酒井順子の『負け犬の遠吠え』にある距離感を置いたシリアスな読解と、自嘲と冷やかしの実感の乏しいレポートになっていたと思う。男の負け犬の理想型の僕自身がむしろ、卑下慢どころか、ノンシャラに楽しんでいたところがあったので、しまらないレポートになったかと反省はしています。本書は酒井順子が提示した問題を見事に描いているという側面もあるが、はるかにそれを越えて、生きた女の内面がそんな小癪な酒井順子の分析を色あせて見せる。この読書会に参加したメンバーの方には是非とも読んでもらいたいですね。

「私はさ、まわりに子どもがいないから、成長過程に及ぼす影響とかそういうのはわかんない、けどさ、ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね」
◆なぜ私たちは年齢を重ねるのか。生活に逃げこんでドアを閉めるためじゃない、また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の足で歩いていくためだ。

僕があれこれ書くより、makisukeさんの<マシーン日記>を読めば本書の直木賞は当然ながら芥川賞をもらっても当然であったろうとナットクします。まあ、そういう賞の話はどうでもいいのですが、作品として間違いなく読み継がれていくものでしょう。女の人達の共感は自信を持って得られると思います(オヤジが断言するのもヘンですが…)。男性が読んで感動を覚えると思う。こんな質の高い、リアリックな男の友情を描くことが可能かどうか、男性作家にチャレンジしてもらいますか…。