時代のけじめ

帰りの電車の中で図書館から借りた佐藤優の『国家の罠』(新潮社)を読む。良くも悪くも面白い。佐藤優は別に冤罪を訴えているわけではない。「時代のけじめ」としての「国策捜査とは何なのか」と分析官、情報屋として分析している。
 大雑把に言えば【1】ケインズ型公平配分路線からハイテク型傾斜配分路線への転換。【2】国際協調的愛国主義パトリアティズム)から排外主義的ナショナリズムへの転換。その「時代転換のけじめ」に鈴木宗男が人身御供になったという分析が佐藤優にはあるのです。しかし、鈴木宗男には松山千春といい、熱い友がいるもんですね。今日も暑い一日でした。
 でも、かような見立ての連立方程式佐藤優は疑問を感じているのも事実なのです。
 この図式に野中広務を当て嵌めればすっきりする。【A】ケインズ型公平配分主義、【B】国際強調的パトリアティズム、鈴木宗男佐藤優もかような方向性が正義であると思っていた。まあ、いまでも信じているでしょう。でも、どうやら、【C】ハイテク型傾斜配分路線と【D】排外主義的ナショナリズムが結びついている。本来、「個人」を拠所にする【C】は抽象性を指向し共同体から離陸してゲームをするのだから、【D】とは馴染まないはずなのに、コイズミ、ブッシュをみてもわかるように排外主義的ナショナリズムの濃度がアップしている。コイズミ的正義とムネオ的正義は綺麗に腑分けできない。
 恐らくプチナショナリズムといようが、ネオであれ、かってのナショナリズムとどう違うのか、そのあたりの検証が必要なんでしょうね。佐藤優はその辺の問題意識は持っている。 目標は【A】と【B】の実現なのです。こうゆう方向性なら僕も総論で賛同する。ただ、各論において種々の疑問が生じるのです。この本は考える資料を与えてくれます。オススメですよ。