白黒は何色?

 退屈男さんのエントリーでどこかに書いているはずなのですが、映画の話で会社の女の子に行定勲監督片山恭一原作『セカチュー』をススメられ、ベストセラー嫌いの退屈男さんがへきへきしたが、ご覧になってお返しにジャックレモンの僕も好きな映画ベストテン入り間違いない「アパートの鍵貸します」を女の子に貸したら「あれ!色がないのですね、見始めたら、白黒なんだ、見るのやめっちゃったぁ」、クールな対応。何とレイモンド・チャンドラー張りの「ハードボイルドな女の子」です。(汗)
 『さらば愛しき人よ』(1975) は原作もさることながら、映画もよかったです。勿論白黒です。ロバート・ミッチャムがマーロウです。最近、本屋の店頭で500円DVDが売られていますが、年寄りにとって「あの映画をもう一度見たいなぁ」と思ったら、ほとんど、白黒ですね。黒沢明がず〜と白黒に拘ってカラー映画を撮らなかったのは有名な話しだし、事実、カラー時代の黒沢映画はあまり好きではないです。カラーの良さを効果的に演出しているのはアニメだと思う。宮崎駿の白黒なんて見たいとは思わない。でも、実写だと白黒はカラー映画より感情移入し易いとも言えるのはなんでだろう。僕にとって一番怖い化け猫映画入江たか子の白黒だし、カラーだとお化け屋敷に迷い込んだお遊びになるのです。まあ、それは僕の私的な体験の記憶が白黒時代に少年時代を送ったということが一番の要因でしょう。
 ところで、武田徹オンライン日記8/12で「なんのための色か」をエントリーしていますが、カラーテレビの普及の背景にベトナム戦争があったという視点を紹介している。松田浩『ドキュメント戦後放送史』(双柿舎)下巻からのネタなんですが、確かに「テレビはカラー」が当然となって、感覚と欲望の枠組みが変わって行くのです。
 最近、雑誌『風の旅人』の写真を見てセバスチャン・サルガドにしても15号に掲載のジャン・ゴーミーにしろむしろ、白黒だからこそ、訴える力が濃密であり得る。白黒は何色なんでしょうか、位相が違うって気がします。
人生色々の小泉さんは白黒でないことは間違いないですね、でも、何色と問われればわからないです。