人文道場=六十の手習い=

 僕は鶴見俊輔のように不良少年でもなかったし、頭がいいっていう自信も持っていなかったから、鶴見さんが六十の手習いでいい先生について朝鮮語の勉強をした。でもまるっきりものにならなかった。でも、「ああ、おれは頭悪いなって、はじめて思い知ったんですよ。それはひとつの財産です」って語ってくれるひそみに習えば、僕が今、あんまり、金儲け、実用に縁のない読んでも殆ど理解しているかどうか不安がつきまとって、それでも読み進むのは「ああ、俺は相変わらず頭が悪いんだ」と再認識することになるのかと、これは又、藤原書店からDVD化された『老年礼賛』の書籍版とも思える『まごころ』からの引用。*1

[…]自分は頭が悪いということがはじめてわかったんだから、これは財産です。
 その立場から見ると、知識人がアジアとの連帯とかいろいろ言うでしょう。あれは大変に浮いて聞こえるんだな。私だってアジアとの連帯なんてなかなか言えないですよ。朝鮮語一つ、楽にしゃべれないんですから。そうするとね、アジアとの連帯というもので、じっさい自分でできることは、在日朝鮮人の作品とちゃんとつきあうことなんです。それはやれることなんです。だからことに東北アジアにあるものが大切で、これが世界を変えていくという思想があるときに、私個人にとっては、というか多くの日本人にとってもそうですが、日本にいる七十万人の在日朝鮮人とどうつきあうかという問題が、それはできることなんですよ。それが鍵だと思うね。その人たちは自己内対話をもっている。そこには犀がいる。そういう問題がわからないと困ると思うね。(p42)

 シャノワール・カフェ別館で『在日コリアン100年史記念シンポジウム』姜尚中さんたちの講演報告をしている。ネットの良さはこんな風に講演の情報を即応でアップしてくれるブロガーがいらっしゃることです。こちらは大阪城公園近くの森ノ宮なんですが、六本木の森ビルで行われた現役ジャーナリスト、編集者達を対象にした武田徹さんが仕掛けた東大先端技術の「ジャーナリスト・セミナー」もleleleさんが講演内容をレポアップしてくれている。
 本当にネットアンテナを効果的に張り巡らせれば僕の興味ある情報はすぐに向こうからやってくる。便利といえば便利です。お蔭で、新聞をあまり読まなくなってきました。同居の老母に説教されるぐらいです。「お前は最近、新聞を読んでいるのを見ない、あたしは、ちゃんと読んでいるのに…」って。
 本は読んでいます。なるべく背伸びしてフーコーだとか、アガンベンとか、レヴィナスとか、挑戦しているのですが、もどかしくも、自分の頭の悪さを益々再認識するばかりです。鶴見さんの言葉はあんまり慰めにならない。頭が良いという認識があって、はじめて頭が悪いとわかったなら、優良財産なのですが、僕の場合は不良財産ですね。
 何とか少なくとも優良に近づくために、強い味方が登場しましたね。黒猫房主さんや、ウラゲツさんの情報によると、本屋の店頭で「人文道場」フェアを行うらしい。第一回目の道場主は稲葉振一郎さんです。こんな企画も関西の本屋でマネして欲しいものです。
★そうそう、松田さんのブログで、レヴィナスについて書いていました。
 ランディさんと内田さんがレヴィナス対談していたのですね。こんな風にして少しずつレヴィナス入門ですか…。(注:この対談はとても重要なことが明かされている。って言うか新たな問いが提示されている。レヴィナス好きには必読ですね。