サイン会続報/皇帝の胸像

渋谷

渋谷

 先日、『藤原新也さんのサイン会』について書きましたが、具体的な案内がアップされましたね、
『無制限一本勝負だ!』って新也さんらしい剛速球のエントリーです。クリックして下さい。僕も『渋谷』を読みたくなりました。右目を氷で冷やしながらサッカーをみました。ものもらいができたのかな、残念だったけれど、次があります。
 ヨーゼフ・ロートの『聖なる酔っ払い伝説』(白水社)を池内紀訳で読みました。故柏原兵三訳の『ラデツキー行進曲』(筑摩世界文学大系収録)もブックオフで見つけ百五円で購入したのですが、こちらのUブックスも百五円でした。

「利口な者が愚かにもなり、まことの予言者が嘘つきになり、真理を愛する者が偽りを信じはじめる。この世にあって、いかなる人間の美徳も永続しない。ただ一つ、純粋な敬虔さというものを除いてである。信仰はわれわれを欺かない、地上で何も約束しないからだ。まことの信仰者はわれわれを欺かない、地上で利益を求めないからだ。これを民族の生き方に応用するなら、つまり、こうだろう。民族は甲斐もなく、個人の美徳よりももっと疑わしい国家の美徳を求めている。だからこそわたしは国家、しかるべき民族国家を憎むのだ。わが故里であるオーストリア君主国のみが、多くのドアと、多くの部屋と、さまざまな住人を合わせもつところの大いなる屋敷だった。その屋敷が分割され、割りくだかれ、切りとられた。もはやわたしは用がない。わたしは家に住むのは慣れているが、小部屋住まいは不慣れである」
 老伯爵は、このように誇らかに、そしてこのように悲しげに書いている。彼はこころ静かに死のときを待っている。たぶん、みずから死に憧れてもいるのだろう。自分が死んだらロパティニー村に葬ってほしいと、遺言書に書いている。一族の墓ではない、フランツ・ヨーゼフ皇帝が眠るーーあの胸像の眠るかたわらに葬ってほしいというのである。ー『皇帝の胸像』(『聖なる酔っ払い伝説収載』)より、ー

 『ラデツキー行進曲』とシンクロしている。この短篇は清清しいものがあります。

聖なる酔っぱらいの伝説 (白水Uブックス)

聖なる酔っぱらいの伝説 (白水Uブックス)