暴走老人

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081229-OYT1T00029.htm

暴走老人!

暴走老人!

毎日新聞(2008年28日)の「時代の風」で、斎藤環さんが『高齢者と犯罪』というコラムを書いている。先月発表された「犯罪白書」が「高齢犯罪者」という特集だったんですねぇ。
それに反応して精神科医としての斎藤さんが《青少年が専門のように思われがちだが、私は精神科勤務医として、ふだんからさまざまな年齢層の患者さんに接している。そこからの印象なのだが、このところ、若者がますます元気がなくなる一方で、若々しい高齢者が目立つように思われる。》というリード文で始まるのですが、え!ひょっとして、「老人モンダイ」にシフトしたんだろうかと、一瞬、ドキ!っとしました。
斎藤さんの引きこもり、ニートという曖昧模糊とした分析対象に対して、症例か、社会現象かを腑分けしてごちゃごっちゃになった僕のアタマを多少整理してくれましたが、それでも尚、益々わからなくなっているのが本音です。これはという処方箋はない、ただ、当事者たる若者達が「声をあげ」、「動く」しか最適な出口はないと思う。でも、動くには元気が必要。それとも、『バートルビー』(メルヴィル)の「居着き」のフリーズで暴発するか。
犯罪白書」によると、実際、若者の犯罪件数は増えていないのに、メディアはセンセーショナルな報道をしているが、メディアであまり取り上げないが、むしろ老人達の犯罪が増えている。

07年中の一般刑法犯検挙人数のうち、高齢者、すなわち65歳以上の者は4万8605人を占めていた。統計を取り始めた86年以降では最多であるという。9年前の98年は1万3739人で、それに比べて実に3・5倍の増加となっている。この間の高齢者人口の増加は約1・3倍なので、人口の増加をはるかに上回るペースだ。 罪名別にみても、殺人、強盗、傷害、暴行、窃盗、詐欺など、いずれも増加傾向にある。最も多いものは窃盗で、全体の65%、その大半を万引きが占めている。この「万引き」の急増ぶりに、もっとも世相が反映されているように思う。 万引きでつかまった高齢者は、男性の場合は再犯が多く、ホームレスや住居の定まらないものが目立つ。それゆえ動機も「生活困窮」が7割近くを占め、「空腹」も少なくない。これに対し、女性は年金や親族の援助などで生活費には困っていなくても、「盗んだものが欲しかったため」「節約のため」に万引きに及ぶ例が目立つという。 白書では、高齢犯罪者が増加した背景について、居住環境が不安定で、単身生活者が多く、経済的に不安定でありながら福祉サービスを利用していない高齢者が増えたと指摘している。要するに「社会的な孤立」と「経済的不安」が大きな要因をなっているのだ。

今日、僕宛に社会保険庁から葉書が来ました。来年の一月に65歳になるから、まさに白書の当事者たる高齢者なのです。どうやら、65歳からの年金の受け方が変わるみたい。書類を読んでも分かりにくい。 タイトルは『「厚生年金保険 老齢厚生年金裁定請求書」の提出にあたって』で、《特別支給の老齢厚生年金を受けている方は、65歳になりますと、その年金の受給権は消滅し、今までの老齢基礎年金と新たな老齢厚生年金を受けることになります。》そんで、同封の「厚生年金保険老齢厚生年金裁定請求書」を50円切手を貼って投函したのですが、まだ、はっきりと腑に落ちていない。
斎藤さんはコラムで藤原智美の『暴走老人』を取り上げ、キレやすい「新」老人たちの暴走は、近年急速に弱者化しつつある若者たちに比べても一層深刻なものがあるように思われると書いている。
確かに、まだ多くの若者たちが、現時点で「家族」をあてにできる。かって、僕は『<野宿者襲撃>論』の生田武志さんに質問したことがありましたが、他の先進国に比べてホームレスの若者が少ない、これから、どうなりますか?ひきこもりがホームレスになったという事例がありますか?って訊いたら、これから増えるんでないですかと言う答えでした。
でも、高齢者にはそのような「家族」に期待出来ない場合が早急にやって来たということでしょう。独居老人は手元にデータがないので、正確には指摘出来ないが急激に増えているのではないか。確かに、家族、共同体の底が抜けたら、老人は暴走しますよ。