夢の浮橋/無門庵
- 作者: 木山捷平
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1990/08/01
- メディア: 文庫
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今日も昼寝はしたけれど、いまのところ調子がいい。もう、大丈夫でしょう。
微熱があって蒲団にくるまっているときは、思想系、哲学系の本は読めないですねぇ。というわけで久しぶりに小説を読みました。棚にあって、リサイクルの処分工程表にもランクインしているものですが、谷崎潤一郎の『少将滋幹の母』、木山捷平 の『白兎・苦いお茶・無門庵』です。『少将滋幹の母』はうたた寝しながら読むには最適ですね。ほんまに「夢の浮橋」。
オヤジと同郷の作家木山捷平 は、気になっている作家ではあったのですが、「私小説」は多少の食わず嫌いでまっとうに読んだことがなかったのに、予想以上に面白かった。悲惨なシーンがあっても思わず笑ってしまうユーモアがあります。
「引揚者精神」かぁとつくづく思い当たることがあります。僕の同級生にも大陸で生まれて引き揚げて、やっと日本の大學を卒業したのに、就職をしないで、イスラエルのキブツに行って、様々な国の人と交流し、とうとう、パレスチナ問題にかかわり、去年は彼の紛争地帯写真家としてドキュメンタリー映画も公開し、今は写真誌を媒体にして世界に対して戦争の悲惨さを訴えているが、僕にはそのような「引揚者精神」はなかったのだと、改めて思いました。
木山は終戦直前に新京(長春)で召集され、引揚者になるのですが、僕のオヤジは木山と同じ備中の在ですが、満州事変が始まった頃に召集されている。だけど、昭和18年には帰省している。だから、僕はこの国で生まれたわけです。
木山は三ヶ月ぐらいしか、それも終戦のどさくさでの新兵体験と、召集兵ではあったけれど、都合、十年ぐらい戦場で青春を送ったオヤジとはまるっきり違う世界観を持ってしまったのであろうかと想像する。
作家にとって一年余りの難民の日々は凄惨だったのです。でも彼の私小説には、救いがある。読了してとても良い気分になりました。
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0473.html