『私のなかの「ユダヤ人」』

私のなかの「ユダヤ人」

私のなかの「ユダヤ人」

id:mojimojiさん♪「パレスチナを、村上春樹のエルサレム賞講演がきっかけで読み始める人に勧める5冊の本 - モジモジ君のブログ。みたいな。」が、ルティ・ジョスコヴィッツ『私のなかの「ユダヤ人」』を取り上げている。そうか、改版されていたんだよね。旧版について、4年ぐらい前にブログに書いていた。
作者のルティ・ジョスコビッツは今、現在、無国籍であるかどうかわからない。『私のなかの「ユダヤ人」』が最初に出版されたのは1982年である。その年の集英社のプレイボーイ・ドキュメントファイル賞をもらってのです。僕の手元にあるのは絶版になったのを三一書房が再刊した1989年版です。彼女はユダヤ人として1949年イスラエルに生まれるがキブツで写真家広河隆一と出会い、結婚を決意する。そして1981年、ルティ・ジョスコビッツ・広河として日本帰化申請を出し、そのために法務省の指導で、まず、フランス国籍を離脱するように言われたので、その通りの手続きを行ったのです。だが、法務省は「あたなにフランス国籍を抜けと言った覚えはない」と言う。彼女は無国籍になった。フランスも日本も暗に「イスラエル国籍」をとれば問題解決になる言っているのです。でも、彼女にとってユダヤ人といえども自分が希望する人間になる権利がある、他人の望む通りにはいかないのだと、そのような異議申し立てのメッセージもあって本書を上梓したのだと思う。

 イスラエルは、その国々に生きる多くのユダヤ人にとっては外国である。しかもユダヤ人しか受け入れようとしない国だ。イスラエルではユダヤ教による結婚しか認められず、しかもユダヤ人同士でしか結婚する権利がない。日本人の夫を持ち、割礼(陰茎包皮を切除する宗教儀式)を受けていない息子を持つ私が、イスラエルの国籍を取ったからといって、一体何ができるだろうか。おまけに私も娘も息子も、成長すればその国に昔から住んでいたパレスチナ人と闘うために徴兵され、私はというと、そのパレスチナ人の昔住んでいた家の中に座って、子供たちの無事を祈れとでもいうのだろうか。

 辛辣である。作者は広河隆一氏と別々の道を歩んでいるみたいですが、本書が発刊されて15年以上経っているのですね。戦争報道写真家としての広河隆一はフォトジャーナリストたちの発表メディアとして『DAYS japan』を創刊したが、彼女は今どうしているのだろうかと、気になります。作者は「ユダヤ人とは何か」と、彼女の一家を足跡を辿りアウシュビィッツの底からパレスチナへと向かう内なる旅を本書で刻印するのです。
 映画 『ルート181』を見る前に再読したいと思います。
 付記:biiさんのコメントで初めて知ったのですが、ルティさんが『ルート181』の日本語字幕編集の監修をしていたのですね。ー♪2005-12-24 - 葉っぱのBlog「終わりある日常」よりー
改めて改版された本を読みたくなりました。旧版♪私のなかの「ユダヤ人」 - ちびころおばさん備忘録」が、手元にないのですw。