7月にも先輩患者の知恵ネットで無料公開

前立腺がん (インフォームドコンセントのための図説シリーズ)
5月8日の毎日新聞の「くらしナビ」の記事・「先輩患者の知恵 ネットに」ですが、一部引用します。

 医師や看護師、患者や研究者らでつくる市民団体「DIPEX Japan」(ディペックス・ジャパン、事務局・東京、別府宏圀理事長)、乳がん前立腺がんの患者各50人の闘病体験の語りを映像収録している。同じ病気を抱える患者に検査や治療の選択に役立ててもらうのが目的で、7月にもネット上にデータベースを構築し、無料で公開する計画だ。(略)/闘病計画をデータベース化するディペックスは、01年に英オックスフォード大で始まった。がんだけでなくうつ病や難病など、さまざまな患者の語りが映像、音声、テキストのデータで収録され、ネット上で公開されている。既にドイツ、スペインで取り組みが始まり、イタリアやニュージランド、オーストラリアでも検討が進む。(略)/英国では医学部の授業に使われるなど、教育や研究でも活用されている。日本でも同様の取り組みを進める予定だ。/闘病記は、これまで主に出版の形態をとってきた。今ではインターネットに闘病体験をつづるブログも多く、データベース化も進む。/ネット上の闘病ブログを集めたサイト「TOBYO」(http://www.tobyo.jp/)は、1万4119件、691種類の病気の闘病ブログを収集する。発症時の年齢や性別、部位などから必要なブログを検索できる仕組みを持つ。/また、「ライフパレット」(http://lifepalette.jp/)は、約500人の登録会員のみが執筆、投稿できる闘病ブログサイト。毎月約24万件のアクセスがあり、ネット上に多い中傷や根拠のない書き込みに対しては、医師やスタッフらが24時間常時監視体制をとる。/「TOBYO」を運営する「イニシアティブ」(事務局・東京)の三宅啓代表(56)によると、ネット上には約3万件の闘病ブログがあり、少なくとも年間3000件ずつ増えているという。「ブログの良さは、必要な時にすぐに読めること。患者や家族がどこにいても、欲しい情報、新しい情報をより早く得られる」と話す。

まさにそうで、僕も意識して闘病記を頻繁にアップしようかとは思うけれど、書いていて楽しくないし、僕自身が楽しくないのに読む方も疲れるはずです。恐らく、闘病記は同じ病気に悩む患者、回りの人、医師やスタッフの人達のための患者の声を聴くための即応性のあるツールなのでしょう。だからこそ、データに徹した書き方をすればいいのかもしれない。淡々とね。
先日のPSA検査は、9.180(5月14日)、前回(4/11)は8.150、前々回(3/13)は5.510。医師の所見は数値の上昇カーブが前回と比べると緩やかで、骨シンチもシロだったので、このまま同じ処方でホルモン療法を続けたほうがいいとのことでした。
【処方箋】
(1)■LH-RHアゴニスト*1徐放製剤=ゾラデックス(3ヶ月に一回、皮下注射で投薬。当初は同じLH-RHアゴニスト徐放製剤のリュープリンを月一回、皮下投与していたが、ゾラデックスに切り換えたのです。(2)の抗アンドロゲン剤(カソデックス)はまだ服用していなかった。(1)だけで効果があったのです。効き目がなくなり、補助薬として(2)が追加服用されたのです。(1)の皮下投与だけで数年間の効果があり、日常生活では、殆ど前立腺がんの患者だという意識が薄れました。でもやがて、効かなくなったわけです。そんで、(2)がお助けマンとして登場とあいなったわけ。
(2)■抗アンドロゲン剤=カソデックス錠
この薬の効果で上がり目になり始めたPSA数値も落ち着き始めた。(数年間の効果がありました)だけど、2008年度になると徐々に効かなくなる。
(3)■抗アンドロゲン剤=オダイン錠
とうとう2008年12月12日にオダイン錠に切り換える。でも、効いているのか効いていないのかなんとなくグレーゾーンで一喜一憂しているわけです。そもそも、前立腺は、男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を受けて分化・増殖し機能を発揮するわけです。だから、アンドロゲンのない環境では前立腺は退縮する。前立腺がんでもその性質は引き継がれるため、がん細胞にアンドロゲンが到着しないようにすれば治療につながるというのが、内分泌療法のコンセプトなのです。前立腺がん細胞がアンドロゲンを受け取るためには、細胞内にアンドロゲン受容体(AR)が必要で、(2)、(3)の抗アンドロゲン剤の働きは、ARと結合しARを占拠することによりアンドロゲンとARの結合を阻害し、がん細胞がアンドロゲンの情報を受け取れないようにすることです。(参照:『前立腺がん』医薬ジャーナル社2008)

*1:LH-RHアゴニストは、LH-RH受容体に作用して本来生体に存在するLH-RHと同様に機能する作動薬です。そもそもLH-RHは、視床下部から放出され、下垂体前葉に働いてLHを分泌させ、LHは精巣に作用してアンドロゲンの産生・分泌を促します。したがって、この薬を継続的に用いてLH-RH受容体を持続刺激すると、下垂体はこれまでとは逆にLH-RH受容体の数を減らしてLH-RHに反応しないようになり、最終的には無反応になります。その結果、LHの分泌、ひいては精巣でのアンドロゲン合成が抑制されて、血中アンドロゲンは去勢レベルに低下します。『前立腺がん』p92より