ガン抑制遺伝子/PHLDA3

昨日(5/19)の毎日新聞理系白書'09」挑戦のとき、の記事で国立がんセンター研究所研究員の大木理恵子さんが紹介されていた。大木さんらは、2月6日付の米科学誌セル(cell)で、がん化のメカニズムを解明しその成果を発表したのです。

PH Domain-Only Protein PHLDA3 Is a p53-Regulated Repressor of Akt p535
Tatsuya Kawase, Rieko Ohki, Tatsuhiro Shibata, Shuichi Tsutsumi, Naoko Kamimura, Johji Inazawa, Tsutomu Ohta, Hitoshi Ichikawa, Hiroyuki Aburatani, Fumio Tashiro, Yoichi Taya
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セルにアクセスしても僕のブログではセキュリティが働いて↑のテキストを読むことができませんが、興味のある方はチャレンジしてください。どうせ、僕の英文読解ではそもそも心許ないw。
がんとは正常な細胞が異常な増殖を繰り返す状態であり、その過程が解明されれば、がん化を防ぐ戦略も見えてくる。大木さんのチームはどのように細胞が異常になり、がん化するかを分子レベルで追求し、とうとう6年がかりでがんに関連する三つの遺伝子のP53、Akt、PHLDA3を調べ、がん化のメカニズムを解明したということです。

 P53は細胞のがん化を防ぐがん抑制遺伝子で、Aktは逆に細胞をがん化させるがん遺伝子だ。P53が司令塔になって別の遺伝子に命令し、その働きでがん遺伝子を抑え細胞のがん化を防いでいることは分かっていた。しかし、P53の指示を受けて働く遺伝子の正体は謎だった。
 大木さんらは、がん細胞が死なずに異常に繁殖する点に注目。細胞死を引き起こす遺伝子PHLDA3が、P53の指示を受け働く遺伝子だと突き止めた。
 ただ、治療法の実現には、遺伝子を特定するだけでは不十分だ。「具体的にどのようにがん遺伝子を抑えつけているのかが分かれば、治療法も糸口も分かってくる。さらにメカニズム解明を続けたい」と話す。

若手の研究員たちに頑張ってもらいたいですね。正体が見えたのだから、一歩も二歩も進んだということでしょう。ところで、前立腺がんに関して言えば、何故ホルモンに依存しないがん細胞が出現するのか、現在のところ内分泌療法後の「ホルモン非依存性前立腺癌」に対しては有効と言える治療が存在しないのが現状なのです。
論文:ヒト前立腺癌xenograftの作成とホルモン非依存性獲得のメカニズムの解明
xenograftは発音も意味もわからなかったのですが、こちらのブログでわかりやすく説明してくれていました。
http://todaysword.blog42.fc2.com/blog-entry-32.htmlxenograft